エフィアルテス(英語表記)Ephialtēs

改訂新版 世界大百科事典 「エフィアルテス」の意味・わかりやすい解説

エフィアルテス
Ephialtēs
生没年:?-前461

アテナイの政治家。テミストクレスを継いで民主派の指導者となり,寡頭派の領袖キモンとアテナイ政界を二分した。彼は寡頭派貴族拠点であるアレオパゴス会議の不正を衝いて,その勢威動揺を与え,次いで前462年,これより先スパルタの大地震にさいして起こったヘイロータイ反乱を抑えるため,数千の重装歩兵からなる援軍を率いてスパルタに渡っていたキモンの留守を狙い,盟友ペリクレスと謀って,武力を背景にアレオパゴス会議の政治的実権を奪った。この権力奪取は,ポリス民主政の制度上の完成を意味するものとして,アテナイ史上,画期的な位置を占めるが,彼自身は,翌年反対派に暗殺された。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エフィアルテス」の意味・わかりやすい解説

エフィアルテス
Ephialtēs

[生]?
[没]前462頃
古代ギリシア,アテネの民主派の政治家。アテネの民主政発展の道を最終的に開いた政治家。親スパルタ派で貴族の支持を得たキモン対立。前 465年以降将軍職 (ストラテゴス ) につき,スパルタにおけるヘロットの反乱に対するキモンの支援に反対したが,成功しなかった。しかし前 462~461年政敵キモンのスパルタへの派兵不在を利用し,アレオパゴス会議の実権を奪い,民会 (エクレシア ) ,評議会 (ブーレ ) の実権を確立する法を通した。そのため反対者により,暗殺された。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「エフィアルテス」の解説

エフィアルテス
Ephialtes

前5世紀前半

古代アテネの民主政成立期に活躍した政治家。伝記については不詳。前462年,寡頭派の領袖キモンスパルタ要請を受け海外出陣中の隙を突いて,貴族支配の拠点であったアレオパゴス評議会の実権を奪い,国家運営の中心を民会五百人評議会および民衆法廷に完全に移して,アテネの直接民主政を完成させた。改革成功後まもなく反対派により暗殺されるが,彼の政治的意志は同志ペリクレスに引き継がれた。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エフィアルテス」の意味・わかりやすい解説

エフィアルテス
えふぃあるてす
Ephialtes
(?―前462/461)

古代ギリシア、アテネの政治家。テミストクレスの失脚後、民衆派を率いた清廉潔白の士として有名。エウリメドンの会戦にも参戦した。ペリクレスの支持を得ながら政治活動をし、貴族派の領袖(りょうしゅう)キモンに対抗、紀元前462年あるいは461年、彼らの牙城(がじょう)であるアレオパゴスの評議会の諸権能の剥奪(はくだつ)を試み(「エフィアルテスの改革」として知られる)、アテネの民主政の発展に貢献した。しかし、改革直後、貴族たちの激しい憎悪を受け、暗殺された。

[真下英信]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のエフィアルテスの言及

【アテネ】より

…ペルシア軍がギリシア本土から撤退したのち,前477年にエーゲ海周辺諸市の輿望を担って対ペルシア攻守同盟すなわちデロス同盟の盟主の地位に就いたアテナイは,以後,前5世紀末までペロポネソス同盟に拠るスパルタと並んでギリシア世界を支配し,その上に立ってアテナイ民主政を完成させ,かつ文化的創造力を縦横に発揮した。 アテナイ民主政の完成は,前462年のエフィアルテスの改革によって遂げられる。前5世紀に入っても,アテナイでは名門貴族の支配の維持を目ざす寡頭派と,民衆の意向を背景に国政の主導権を握ろうとする民主派との争いが続いた。…

【アレオパゴス会議】より

…殺人罪の裁判が主たる任務であり,古くは氏族制的な血の復讐の慣習に対して国家公共の立場から和解の判決を下す役割を演じ,そこから国家の法秩序や役人の行動をも監視するだけの権威を有していたらしい。前487年アルコン職が抽選になったため,アレオパゴス会議の権力も衰微し,さらに前462年には民主派の指導者エフィアルテスらの提案でアレオパゴスの国政監視の権限は剝奪された。かくして政治的には無力になるが,あらゆる官職のうちでこの会議の議員のみは民主政期にも最後まで終身制であり,特異な権威を保持した。…

※「エフィアルテス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android