日本大百科全書(ニッポニカ)「エビスグサ」の解説
エビスグサ
えびすぐさ / 夷草
[学] Senna obtusifolia (L.) H.S.Irwin et Barneby
Cassia obtusifolia L.
マメ科(APG分類:マメ科)の一年草。茎は高さ1.5メートル。葉は互生する偶数羽状複葉で、2~4対の小葉よりなり、小葉は倒卵形、先端はわずかに突出し、長さ3~4センチメートル、ほとんど無柄。夏に葉腋(ようえき)に長い柄をもつ黄色花を1、2個つける。花弁は倒卵状円形で5枚、雄しべ10本、雌しべは1本。豆果は細長く弓状に曲がり、長さは15~20センチメートル、中に菱(ひし)状四辺形の種子が一列に並ぶ。種子は黄褐色ないし黒褐色、長さ4.5~6ミリメートル、幅3~3.5ミリメートルで、日本ではこれを決明子(けつめいし)と称して薬用に供し、はぶ茶と称して茶のかわりに用いる。各種のアントラキノン誘導体、粘液、タンパク質、脂肪油、ビタミンAを含有し、健胃、整腸、緩下(かんげ)、利尿、消炎作用をもつので、便秘、胃腸病、高血圧、眼病、口内炎などに用いる。中央アメリカ原産で、日本では古くから栽培されている。中国では熱帯アジア原産の類似植物ホソミエビスグサS. tora (L.) Roxb.(C. tora L.)を決明や草決明の名で栽培し、その種子を決明子と称している。この種子は暗赤褐色で、長さ3~4ミリメートル、幅2~3ミリメートルと前者よりも小粒で、重量も前者の半分しかない。決明は本種のことであり、前者にそれを用いるのは正しくないが、薬効に相違はないから実用上は問題はない。インドではこの種子を炒(い)ってコーヒーの代用としている。
[長沢元夫 2019年10月18日]