エネルギー政策(読み)エネルギーせいさく

百科事典マイペディア 「エネルギー政策」の意味・わかりやすい解説

エネルギー政策【エネルギーせいさく】

国のエネルギーとエネルギー・システムのありかたを規定する基本的な政策で,国家経営の根幹をなすもの。日本では,2002年に成立したエネルギー政策基本法にもとづき,エネルギー基本計画が定められている。1965年以来,日本の将来のエネルギー供給と需要の量及び構造を見通して,数年おきに長期エネルギー需給見通しが策定されてきたが,それを策定するための基本的な方針がエネルギー基本計画である。エネルギー政策基本法では,〈エネルギーの安定供給の確保(エネルギーセキュリティー)〉と〈環境への適合〉を市場原理に対して優位に置くことを定めている。2003年10月に閣議決定された計画では,エネルギーベストミックスの中で原子力を基幹電源として位置づけ,天然ガスにも力点置き,事故のリスクや核燃料サイクルへの責任もあいまいなまま原子力に国が関与する姿勢前面に打ち出していた。2011年3月の東日本大震災福島第一原発事故は,エネルギー基本法およびエネルギー基本計画の抜本的見直しを迫るものとなったが,2012年9月民主党野田政権は〈革新的エネルギー・環境戦略〉を提起し〈2030年代の原発稼働率ゼロ〉,〈40年たった原発は廃炉〉,〈原子力規制委員会が安全と認めた原発は再稼働〉という3原則を打ち出した。しかし,〈戦略〉は政府方針として閣議決定されず,2012年12月に成立した第二次安倍晋三内閣にもちこされるかたちとなった。安倍晋三内閣は,2013年1月民主党政権の〈2030年代の原発稼働立ゼロ〉方針をあっさりと転換し白紙に戻すと表明議論をまとめてきた総合資源エネルギー調査会・基本問題委員会についても人選から見直して議論のあり方そのものを変更する方針とした。2014年4月安倍政権は民主党政権が掲げた〈原発ゼロ〉を転換する方針を正式に決定。内閣として新たなエネルギー基本計画を閣議決定した。国の原子力・エネルギー政策のあり方を,政権の基本方針として閣議決定するのは3.11福島第一原発以後初めてである。原発をベースロード電源として安全性が確認できた原発から再稼働することを明記した。〈脱原発依存〉の具体的な姿を示さないまま,原発回帰の姿勢を鮮明にした。計画では,東京電力福島第一原発事故を受け,原発比率を〈可能な限り低減する〉としたが,いつまでにどれだけ減らすかの道筋は示していない。原子力規制委員会の原発の新増設についても〈確保する規模を見極める〉として,新増設を否定した民主党政権の方針を転換した。原子力規制委員会の審査で安全性が確認されれば政権は無条件で再稼働を認めるという方針。また高速増殖原型炉もんじゅを延命し核燃料サイクル政策を推進する方針も明記した。再生可能エネルギーの発電量の割合は〈2030年に約2割〉というこれまでの目標を上回ることを目指すが具体的な数値目標とは位置づけない。〈多層化・多様化した柔軟なエネルギー需給構造の構築〉を掲げてはいるが計画に数字はなく経済性の無い核燃料サイクルも〈推進〉のままとなった。遅れている〈電力制度での発送電分離〉や〈自然エネルギー増加〉の推進についても明確な数字目標や具体的な政策はない。過去のエネルギー政策づくりは経済産業省と電力業界の影響が強かったがそのシステムが戻りつつある。2014年4月に閣議決定されたエネルギー基本計画骨子は次のとおりである。(1)原子力は重要なベースロード電源,(2)規制基準に適合した原発は再稼働,(3)原発依存度は可能な限り低減,(4)高レベル放射性廃棄物は国が前面に立ち最終処分に向けて取り組む,(5)核燃料サイクルは推進,(6)〈もんじゅ〉は国際的な研究拠点とする,(7)再生可能エネルギーは2013年から3年程度導入を最大限加速する。

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