エドワーズ(英語表記)Jonathan Edwards

デジタル大辞泉 「エドワーズ」の意味・読み・例文・類語

エドワーズ(Robert Geoffrey Edwards)

[1925~2013]英国の医学者。体外受精について研究、P=ステプトーとともに採卵・培養技術を開発し、1978年に世界初の体外受精児を誕生させた。2010年ノーベル生理学医学賞受賞。

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改訂新版 世界大百科事典 「エドワーズ」の意味・わかりやすい解説

エドワーズ
Jonathan Edwards
生没年:1703-58

アメリカニューイングランド植民地時代最大の神学者コネティカット州イースト・ウィンザー生れ。1720年イェール大学を卒業,その後神学の研究をすすめ,母校で教鞭をとり,27年祖父が牧師をつとめるマサチューセッツ州ノーサンプトンの会衆派教会の副牧師,29年祖父の死後牧師となる。彼は,初期ピューリタンの厳格なカルビニズムの神学や禁欲的なピューリタニズムの倫理が世俗化しつつあった時代に,アメリカのリバイバル(信仰復興)運動の最初となった大覚醒Great Awakeningの指導者として,父祖の信仰から離れ倫理的に腐敗した人々に対して神の審判の迫っていることを説き,悔い改めて回心することをすすめた。なかでも《神の怒りSinners in the Hands of AngryGod》(1741)の説教は有名である。この信仰大覚醒によって世俗化されつつあったピューリタニズムを復興し,独立直前の植民地に共通の精神的連帯をきずいた。回心を強調したことから宗教の感情面に関心をもち,最初の宗教心理学者と呼ばれるほど信仰の主体的側面を重視し,回心の経験のない者は教会員と認めないという厳格な態度をとった。ために回心していなくとも教会員と認める,いわゆる半途契約Halfway Covenantに反対して,数十年牧会したノーサンプトン教会から追放される。しばらくインディアン伝道に従事したのち,57年ニュージャージー・カレッジ(現,プリンストン大学)の学長に招かれたが,数ヵ月後天然痘のため死去。
執筆者:

エドワーズ
Robert Geoffrey Edwards
生没年:1925-

イギリスケンブリッジ大学生理学教室で,人間の体外受精の研究を続け,P.C.ステプトーの協力を得て,1978年7月世界最初のいわゆる“試験管ベビー”を出産させた。家畜での体外受精はすでに広く行われ,人間でも1969年ころから研究が始まっていたが,この成功をきっかけに,世界で広く試みられるようになった。ただし取り出した卵を他の目的に用いることも可能であり,現にエドワーズも,研究用の使用を認める発言をした(1982)など,倫理上明確にしておくべき問題点をはらんでいる。エドワーズ自身は生理学者であり,医師ではない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エドワーズ」の意味・わかりやすい解説

エドワーズ
Edwards, Jonathan

[生]1703.10.5. コネティカット,イーストウィンザー
[没]1758.3.22. ニュージャージー,プリンストン
アメリカの牧師,神学者。エール大学卒業後マサチューセッツのノーサンプトンの牧師となり,「大いなる覚醒」 Great Awakeningと呼ばれる信仰復興運動を指導したが,信仰に対する要求が厳しすぎるため教会を追われ,1750年頃僻地ストックブリッジに移り,神学の著作のかたわらインディアンへの布教活動に従事した。 1758年,ニュージャージー大学 (現プリンストン大学) に迎えられて学長となったが,就任1ヵ月余で天然痘により急逝した。著書に『贖罪における神の栄光』 God Glorified in the Work of Redemption (1731) ,『驚くべき神の御業』 Faithful Narrative of the Surprising Work of God (1737) ,『自伝』 Personal Narrative (1740頃) ,『ニューイングランドにおける現在の宗教的覚醒に関する考察』 Some Thoughts Concerning the Present Revival of Religion in New England (1742) ,『宗教感情に関する小論』A Treatise Concerning Religious Affections (1746) ,『原罪』 The Great Christian Doctrine of Original Sin Defended (1758) などがあるが,正統派カルバン主義の立場から自由意志を否定した『意志の自由』A Careful and Strict Enquiry into ... Freedom of Will (1754) は特に有名。

エドワーズ
Edwards, Robert

[生]1925.9.27. バトリー
[没]2013.4.10. ケンブリッジ近郊
イギリスの生理学者。フルネーム Sir Robert Geoffrey Edwards。ウェールズ大学の構成大学であるバンガー大学で動物学を学び 1951年に卒業。エディンバラ大学動物遺伝研究所で動物の生殖生理学を研究,1957年に博士号を修得した。アメリカ合衆国カリフォルニア工科大学,イギリスの国立医学研究所 NIMRを経て,1963年ケンブリッジ大学生理学科に移りチャーチルカレッジの一員となった。1958年 NIMRに赴任したのち,ヒトの体外受精に取り組んだが,さまざまな条件がほかの哺乳類とはかなり異なり,なかなか成功しなかった。1968年に腹腔鏡の存在を知ると,この技術の権威オールダム総合病院の産婦人科医パトリック・ステプトーの協力を得て不妊治療の臨床に踏み出した。1969年『ネイチャー』誌に発表した体外受精成功の論文は世界的に注目された。1978年7月25日には世界初の体外受精児ルイーズ・ブラウンが誕生。1980年に設立した不妊治療専門研究医療施設バーンホールクリニックの研究責任者を務めた。2001年にはケンブリッジ大学から名誉博士号を授与され,ラスカー賞も受賞。体外受精や胚移植という画期的な生殖医療技術の開発に対し,2010年ノーベル生理学・医学賞が授与された。

エドワーズ
Edwardes, George

[生]1852.10.14.
[没]1915.10.4.
ロンドン劇場支配人。イギリスのミュージカル・コメディーの開拓者。ダブリンのゲイエティ劇場に関係したあと,ロンドンのサボイ劇場支配人 (1881~85) 。 1885年からロンドンのゲイエティ劇場を経営,「ゲイエティ・ガールズ」で人気を呼ぶ。 93年デイリー劇場を開設,「ゲイエティ・ガールズ」と並んで『メリー・ウイドー』その他多くの喜歌劇などを上演。

エドワーズ
Edwards, Jorge

[生]1931. サンチアゴ
チリの小説家。『夜の重み』 El peso de la noche (1965) と『石の招客』 Los convidados de piedra (78) が主要作。短編集『中庭』 El patio (52) ,『町の人々』 Gente de la ciudad (65) ,回想録『好ましからざる人物』 Persona non grata (73) もある。

エドワーズ
Edwards, Ernest Richard

イギリスの音声学者。 1900~01年に日本を訪れ,新村出,八杉貞利をインフォーマント (被調査者) として日本語の発音を研究。 03年ソルボンヌ大学文学部に『日本語の音声学的研究』 Étude phonétique de la langue japonaiseを博士論文として提出。語音論,語法に関するノート,テキストの3編から成るもので,日本語音声学を前進させる役割を果した。

エドワーズ
Edwards, Richard

[生]1523頃
[没]1566
イギリスの劇作家。オックスフォード大学に学ぶ。「チャペル・ロイヤル少年劇団」 Children of the Chapel Royalの指導者。

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図書館情報学用語辞典 第5版 「エドワーズ」の解説

エドワーズ

1812-1886.英国ロンドン生まれ.公共図書館運動推進者.独学で大英博物館の登録利用者となり,著作活動の後,同館に勤務.傍ら公共図書館設置運動を展開し,下院公共図書館特別委員会で世界各国の公共図書館事情を証言,世界最初の公共図書館法の成立(1850)に貢献する.1851年にマンチェスター公共図書館の初代館長.同館を退職後はオックスフォード大学のクィーンズカレッジ図書館などに勤務.主著に『図書館に関する覚書』(Memoirs of Libraries1859),『町の無料図書館』(Free Town Libraries1869)などがある.

出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報

百科事典マイペディア 「エドワーズ」の意味・わかりやすい解説

エドワーズ

イギリスの生物学者。マンチェスター出身。ケンブリッジ大学名誉教授。第2次世界大戦ではイギリス陸軍に従軍。その後,エディンバラ大学で生物学を学ぶ。1978年に世界初の体外受精児のルイーズ・ブラウンを誕生させ,1980年にはイギリス南部に世界初の体外受精クリニックであるボーンフリークリニックを設立した。2010年にノーベル医学生理学賞を受賞。→ノーベル賞

エドワーズ

アメリカの映画監督,脚本家。《ピンク・パンサーシリーズ》(1963年から83年,ピーター・セラーズ主演)など軽妙なコメディーに手腕を発揮したが,初期の作品には,トルーマン・カポーティ原作の《ティファニーで朝食を》(61年,オードリー・ヘップバーン主演),J.P.ミラー脚本の《酒とバラの日々》(62年,ジャック・レモン主演)など文芸的色彩の強い佳作がある。妻は,女優のジュリー・アンドリュース。

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ピティナ・ピアノ曲事典(作曲者) 「エドワーズ」の解説

エドワーズ

オーストラリアの作曲家ロス・エドワーズは独自の音世界を創造する。それは音楽が本来持っていた力強さを再び取り戻そうとするものであり、儀礼的で自然発生的な性格をもち、舞踏への衝動を駆り立てる。彼は作曲家と ...続き

出典 (社)全日本ピアノ指導者協会ピティナ・ピアノ曲事典(作曲者)について 情報

367日誕生日大事典 「エドワーズ」の解説

エドワーズ

生年月日:1916年12月30日
イギリスの劇作家
1961年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のエドワーズの言及

【アメリカ文学】より

…南部のバージニア植民地は世俗的な関心が強く,それだけに自らの文学的創造の意欲を現すことはあまりなかった。 18世紀になるとニューイングランドでは教会の権威が弱まってきたが,その中で宗教の再興をはかろうとしたエドワーズは《意志の自由について》(1754)などの神学的著述によって気を吐いた。しかしこの時代を引っ張ったのは,合理主義の精神に実用性と政治性を加え,文学的にもある種の結実を見せたフランクリンであろう。…

【リバイバル運動】より

…教会生活と信仰が形式化したり教条化して単なる慣習や行事に堕してしまったときや,信徒たちが信仰から離れ世俗化して宗教と無関係に生きているようなときに,その不信仰と罪を糾弾し,悔改めを迫り,宗教と信仰に再び立ちかえらせる伝道,特に大衆伝道の形態をとったものを指す。その典型が18世紀前半,アメリカのニューイングランドでおこったいわゆる〈大覚醒〉で,J.エドワーズやG.ホイットフィールドらの説教を中心として始まり,世俗化した植民地に失われつつあったピューリタニズムを復興させ再宗教化した。全国的規模のリバイバル運動はアメリカにおいてはほぼ50年周期でおこっており,1950年代のW.F.グレアムを中心とするものは,冷戦下の政治社会的諸要因からなる複合的な宗教現象でもあった。…

【試験管ベビー】より

…本法が開発されてから,通気,通水,手術療法(卵管開口術,卵管吻合(ふんごう)術など)によっても治療困難であった女性についても,子どもをもうけたいという望みをかなえることが可能になった。1978年イギリスのR.エドワーズとP.ステプトーにより試験管ベビー第1号が誕生して以来,オーストラリア,アメリカ,西ドイツなどで成功例が報告されているが,成功率はまだ数%で満足すべきものではない。日本でも83年,第1号の誕生をみた。…

【体外受精】より

…哺乳類の体外受精は,1950年M.C.チャンがウサギで成功したのが最初で,現在まで生児を得ているのは,ウサギのほかマウス,ラットのみである。ヒトの体外受精に関しては,1944年に卵割に成功し,71年R.G.エドワーズによって胞胚までの体外培養が可能になった。その後エドワーズはP.ステプトーと協力して研究を進め,78年試験管ベビー第1号の誕生をみた。…

※「エドワーズ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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