エチレンジアミン(読み)えちれんじあみん(英語表記)ethylenediamine

翻訳|ethylenediamine

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エチレンジアミン」の意味・わかりやすい解説

エチレンジアミン
えちれんじあみん
ethylenediamine

脂肪族アミンの一つ。1,2-ジアミノエタンともいう。アンモニア臭をもつ無色液体

 1,2-ジクロロエタンとアンモニアから合成される。強い塩基性をもつ。水、アルコールに易溶、ベンゼンエーテルに不溶。亜硝酸の作用でエチレンオキシドを与える。二酸化炭素、二硫化炭素と反応して、それぞれエチレン尿素(2-イミダゾリジノン)、エチレンチオ尿素(2-イミダゾリジンチオン)を生成する。代表的なキレート試薬であり、二座配位子(配位子としての記号en)として、ほとんどすべての金属に配位して錯塩をつくる。分析試薬として、各種金属イオンの定量分析に用いられるほか、医薬品の合成原料ともなる。

山本 学]

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改訂新版 世界大百科事典 「エチレンジアミン」の意味・わかりやすい解説

エチレンジアミン
ethylenediamine

化学式H2NCH2CH2NH2。1,2-ジアミノエタンともいう。アンモニアに似た臭いのする無色の液体。融点8.5℃,沸点117.0℃。比重0.898(25℃)。水とは任意の割合でまざり,アルカリ性を示す(塩基解離指数pKb=4.07)。1,2-ジクロロエタンとアンモニアから合成される。

 ClCH2CH2Cl+4NH3─→H2NCH2CH2NH2+2NH4Cl

二座配位子として種々の金属原子に配位して錯体を作る(配位子として記述する場合にはenの略号が使われる)。クロロ酢酸と反応させるとEDTA(エチレンジアミン四酢酸)ができる。

用途は広く,キレート剤,分析試薬として使われるほか,繊維処理剤,紙質改良剤,コーティング材料,フィルム,接着剤などの原料,中間体として利用されている。
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化学辞典 第2版 「エチレンジアミン」の解説

エチレンジアミン
エチレンジアミン
ethylenediamine

1,2-diaminoethane,1,2-ethanediamine.C2H8N2(60.1).H2NCH2CH2NH2.工業的には,1,2-ジクロロエタンとアンモニアからつくられる.アンモニア臭をもつ無色の液体.融点10.8 ℃,沸点117 ℃.0.900.1.457.強塩基性で,亜硝酸によりエチレンオキシドになる.代表的なキレート試薬で,ほとんどの金属に二座配位して錯体を形成する.エチレンジアミン四酢酸(EDTA)として,また,殺菌剤,分析試薬,医薬品として用いられる.LD50 1.16 g/kg(ネズミ経口).[CAS 107-15-3]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エチレンジアミン」の意味・わかりやすい解説

エチレンジアミン
ethylene diamine

化学式は NH2CH2CH2NH2塩化エチレンとアンモニアから合成される。アンモニア類似の臭いをもつ無色の液体で,沸点 116.5℃,融点 8.5℃。強塩基性で,ベンゼン,エーテルに不溶。多くの金属イオンに配位して錯体をつくりやすい (配位子としての記号 en) 。微量金属の除去 (特に水銀,カドミウム,ビスマスなど) や,代表的なキレート試薬として化学分析に用いられる。またキレート滴定,希土類元素の分離,微量金属イオンの封鎖剤に使われるエチレンジアミン四酢酸 EDTAの製造原料である。さらにホルムアルデヒド樹脂合成の際の触媒として用いられる。

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