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アメリカの発明家,電気技術者。二重電信機,スズ箔蓄音機,カーボンマイクロホン,白熱電球,映画,アルカリ蓄電池,謄写印刷機などを発明,または改良したことで非常に著名である。貧しい材木商兼穀物商の家に生まれ,小学校には数ヵ月しかいかずに母親から教育を受けた。少年時代から彼は電気や化学の実験に熱中した。南北戦争前後の当時は鉄道と電信網の急速な発展時代であった。エジソンは12歳のときに列車に乗り込む新聞売子となり,長距離列車の車内で新聞を発行するなどの商才を示した。彼はこのころから耳が悪くなり,その後聞こえなくなってしまった。1863年には電信技手となり,その後は,当時の電信技手たちがそうであったように腕を頼りに各地を渡り歩き,かたわら電信機の改良や発明に熱中した。68年からは,ボストンに落ち着いて発明に力を入れるようになった。当時は土地・金属投機の狂乱時代であった。
70年にニューヨークでウェスタン・ユニオン社Western Union Co.のために相場表示機を改良して4万ドルをもうけた。この金でエジソンは自分の研究所をもつことができた。発明工場のようなこの研究所は76年にメンロー・パークMenlo Parkに移り,約10年後にウェスト・オレンジWest Orangeに移った。彼は連日わずかな睡眠で発明活動を続け,次々と大発明を行った。エジソンの成功は,彼自身の努力と好奇心,判断力のたまものであると同時に,背景として発展期にあったアメリカ社会をぬきにしては語れない。79年には炭素フィラメント白熱電球を発明し,続いてこれを商業生産するとともに,82年にロンドンとニューヨークで電灯照明用配電システムの運転を開始した。この事業を通じて形成されたエジソン電気照明会社Edison Electric Light Co.は今日世界最大の総合電機メーカーであるGE社General Electric Co.の前身である。公共送配電網に直流と交流のどちらを用いるべきかの争いにおいて,彼は交流の長所を見抜くことができず,そのためにエジソン社,GE社の経営から退く結果となった。
晩年には鉄鉱石の磁気選別を企業化しようとしたが,失敗した。彼の発明,発見のほとんどは実用を強く意識してなされたものである。例外として,二極真空管の基礎となったエジソン効果の発見がある。エジソンの研究所は,研究開発を目的とする現代の企業研究所のはしりと見ることができる。
執筆者:高橋 雄造
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…1889年,イーストマン・コダック社が同社の開発した写真用セルロイド・リボンに〈フィルム〉の名を冠したのがこのことばと映像の結びつくきっかけとなった。さらにトマス・エジソンが映画撮影用に50フィートという長いフィルム(ロールフィルム)をイーストマンに注文し,このときからこのことばは映画そのものに結びつくことにもなる。なお,セルロイドということばも,英語やフランス語では映画の代名詞として使われており,celluroid screenといえば〈銀幕silver screen〉の意になる。…
…1903年製作のアメリカ映画。発明家のトマス・エジソンが主宰するエジソン・カンパニーの作品で,監督はエドウィン・S.ポーター。〈犯罪〉〈暴力〉〈正邪の対決〉といったすぐれてアメリカ映画的な要素をはらんだストーリーを,初めて映画的な話法で表現することに成功して〈アメリカ映画の最初の古典〉とみなされている。…
…もっとも原始的なシステムは,劇場のスクリーンの背後に俳優や音響係りを配置して,せりふや音をスクリーンにシンクロナイズ(同調)させるもので,1895年に行われたリュミエールの映画会にも,D.W.グリフィス監督の《国民の創生》(1915)の特別公開にもこのシステムが使われたことがあるという。その後,エジソンの〈キネトフォン〉,あるいは〈キネトフォノグラフ〉をはじめ,いろいろなシステムが発明,改良されて,音響と音楽だけのサウンド版《ドン・フアン》(1926),歌唱場面だけを同時録音した〈パート(部分)トーキー〉の《ジャズ・シンガー》(1927)がつくられ,次いで全編に音声が伴う《紐育の灯》(1928)が最初の〈100%オール・トーキー〉として登場する。 ハリウッドの映画会社ワーナー・ブラザースがいちはやくトーキーの製作を始めたが,それはかならずしもそのころになってやっとトーキーの技術的基礎ができたからではなかった。…
※「エジソン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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