エゴマ(荏胡麻)(読み)エゴマ(英語表記)Perilla frutescens var. japonica

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エゴマ(荏胡麻)」の意味・わかりやすい解説

エゴマ(荏胡麻)
エゴマ
Perilla frutescens var. japonica

シソ科一年草で,東南アジア原産。シソ P. frutescens var. crispaとは同一種内の変種関係とされる。外形もアオジソに似ているが,やや大型で高さ 1mに達し,茎も太く,また茎に白い毛が目立つ。植物体全体に特有の臭気があるが,シソの香りとはかなり違い,人によっては不快臭とされる。花穂はシソに比べて短く,花が密集し,萼はやや大きい。花冠は白くわずかに紫色を帯びる。種子に油を含み,しぼって「荏の油」をとる。この油は食用にはならないが乾性油で桐油と同様油紙やから傘などに用い,また照明用の灯油に使われたこともある。この用途のため古く中国を経て日本に伝えられ,現在でもときに栽培されるが,山の中の湿地などに野生化していることもある。同じく本種と同一種内の別変種とされるものにレモンエゴマ P. frutescens var. citriodoraがあり,これは本州,四国,九州などの山地に自生している。やはりシソに似て角張った茎と対生する葉をもち,全草がレモンに似た香りをもつ。葉質は薄く両面,特に脈上に毛があり,裏面には腺点がある。

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百科事典マイペディア 「エゴマ(荏胡麻)」の意味・わかりやすい解説

エゴマ(荏胡麻)【エゴマ】

シソ科の一年草。荏(え)・十稔(じゅうねん)ともいい,種子は油を多く含む。シソの変種で,シソに似ているが,やや大きく茎葉には白毛がある。高さ0.6〜1.5m,夏,多数の白花を穂状につける。種子はシソよりやや大きく,秋に収穫。種子からとれる油であるエゴマ油荏胡麻油)はかつて社寺公家が灯油として利用。鎌倉末から室町時代にかけて,大山崎(おおやまざき)離宮八幡(りきゅうはちまん)宮に所属する神人が大山崎油座(あぶらざ)を結成,主産地の瀬戸内海沿岸地帯からの仕入れ,製造,販売を独占して繁栄した。江戸時代以降,油の主原料は菜種・綿実(わたざね)に変わり衰退した。今は日本ではほとんど利用されず,一部で野生化している。

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