エクスタシー(英語表記)ecstasy

翻訳|ecstasy

精選版 日本国語大辞典 「エクスタシー」の意味・読み・例文・類語

エクスタシー

〘名〙 (ecstasy) 感情・官能が高まってわれを忘れ、うっとりとした状態になること。忘我の境。有頂天。恍惚(こうこつ)
※謀叛論(1911)〈徳富蘆花〉「一刹那でも人類の歴史が此詩的高調、此エクスタシイの刹那に達するを得ば」

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デジタル大辞泉 「エクスタシー」の意味・読み・例文・類語

エクスタシー(ecstasy)

快感最高潮に達して無我夢中の状態になること。恍惚こうこつ。忘我。
宗教儀礼などの際に体験される神秘的な心境。しばしば幻想予言、仮死状態などを伴う。脱魂
俗に、錠剤型の麻薬のこと。MDMAメチレンジオキシメタンフェタミン)を主成分とするものが多い。
[補説]ギリシャ語のエクスタシス(ekstasis)が語源で、魂が現象界の外に出る意。

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改訂新版 世界大百科事典 「エクスタシー」の意味・わかりやすい解説

エクスタシー
ecstasy

意識水準が低下して主体的な意志による行動の自由を失い,忘我状態となるか,苦悶,歓喜,憂愁などの気分を伴う恍惚状態になること。宗教における神秘的体験や,性的恍惚感も含む。精神医学的には,ヒステリー反応,てんかん発作の前兆躁病,統合失調症などの異常心理状態,麻薬中毒,催眠状態などにおける通常の意識の消失と変化を意味し,しばしば外界に対する感覚喪失と筋肉のカタレプシー状態を伴う。宗教の中には,神秘体験によるエクスタシーを重要視するものも多いが,とくにシャマニズムでは,中心的行為と考えられている。エリアーデは,その著《シャマニズム》(1951)で,シャマニズムとはエクスタシーの技術であり,これに必ず伴う意識の変化であるトランス状態で,巫者の魂が肉体を離れて天上界や地下界を往復すると信じられている現象であると述べている。シャマニズムのエクスタシーは,脱魂と憑依(ひようい)の2種があるが,エリアーデは狐憑(つ)きや霊などにとり憑かれる憑依を二次的な形態と考えている。

 エクスタシーの語源はギリシア語のek,exō(~の外へ)とhistanai(置く,立つ)の複合語のエクスタシスekstasisであって,〈外に立つ〉という意味であり,もともと古代ギリシアでは,魂が肉体を離れて宙をさまよう状態を意味していた。それが古代末期になって,瞑想などによる神秘的体験と宗教的恍惚感も意味するようになったもので,新プラトン主義の創始者であるプロティノスは,聖なるものに至る霊魂の上昇段階を〈浄化(カタルシス)〉〈観想(テオリア)〉〈忘我(エクスタシス)〉の3段階に分けて考えた。イスラムの神秘主義スーフィズムでも,忘我を最高の神秘体験とする。その他,禅,ヨーガなどによる個人的なエクスタシー状態があるが,宗教行事の中には集団的エクスタシーが体験されることが多く,ギリシアのディオニュソス信仰や小アジアに生まれたキュベレ信仰は,信徒が集団的エクスタシー状態に陥ることで知られる。
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百科事典マイペディア 「エクスタシー」の意味・わかりやすい解説

エクスタシー

意識水準が低下して外部への主体的反応を失い,亡我・恍愡の状態となること。古代ギリシア語ではekstasisといい,魂が肉体を離れて宙を漂う状態を意味した。宗教における神秘体験や性的恍愡感も含まれる。エリアーデによればシャマニズムはエクスタシーの技術であり,これには必ずトランス状態がともなうとされる。

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世界大百科事典(旧版)内のエクスタシーの言及

【神秘主義】より

…それは,人間を超えた絶対者との合一,通常の自己からは絶対的に他なるものとの合一であるから,必然的に自己からの脱却,自己という枠の突破を通してのみ現成する。合一はすなわち同時に脱自であり,神秘家は体験的にいわゆるエクスタシー(脱我,忘我)を知っている。そしてそこで真の自己に目覚めるのである。…

※「エクスタシー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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