ウミホタル(読み)うみほたる

改訂新版 世界大百科事典 「ウミホタル」の意味・わかりやすい解説

ウミホタル (海蛍)
Vargula hilgendorfii

二枚貝状の殻をもった発光性の貝虫(介形)亜綱ウミホタル科の小型甲殻類体長3mmくらい。体は両側から卵形貝殻状をしたキチン質,乳白色の背甲で完全に包まれている。左右の殻は閉殻筋と背面のちょうつがいとによって結ばれ,前縁に触角を出す深い切れ込みがある。複眼をもつ。雌雄異体。上唇の腺から分泌される発光物質は,刺激によって海水中に放出され発光する。日本の太平洋沿岸では夏から秋にかけて多産する。昼間は砂泥底中に潜っているが,夜間遊泳し,腐肉に集まる。これを利用して魚類の肉などを網などに入れたものを,夜間,岸壁桟橋などから海中につるし,適当な時間の後引き上げ,海水を入れた容器中で強く振り,器底に落として,多量に集めることができる。採集後それをただちに天日で乾燥させたものに水を加えてすりつぶすと強く発光する。この乾燥ウミホタルを,湿気を与えないようにデシケーター中などに保存すれば,いつでも適当量とり出し発光させることができる。近似のピロキプリス・ノクチルカPyrocypris noctilucaは体長2mmくらい,白色,殻の後方が強く突出しており,発光性。ウミホタルモドキEuphilomedes japonicaでは体長1.5~2.5mmくらい,殻の表面は一面あばた状,腹側周縁に小剛毛を生じており,発光しない。同科にはほかにも多数種類がある。
生物発光
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウミホタル」の意味・わかりやすい解説

ウミホタル
うみほたる / 海蛍
[学] Valgura hilgendorfi

節足動物門甲殻綱ミオドコーパ目ウミホタル科の海産発光動物。黒潮に洗われる日本の沿岸に限産し、内湾の浅海にすむ。昼間は砂に潜り、夜間に泳ぎ出して死魚などをあさって食べる。体は卵円形の2枚の殻で包まれている。殻長約3ミリメートルで、殻は半透明の飴(あめ)色。腹側の前端部に触角刻とよばれる深いくぼみがあり、そこから触角が出ている。刺激を受けると上唇(じょうしん)にある分泌腺(せん)から発光物質を出し、それが水に触れると酸化して青緑色に発光する。これはルシフェリン‐ルシフェラーゼ反応とよばれる化学反応であるが、よく乾燥したウミホタルを何十年間も保存したあとでも、水をかけると美しく発光する。発光するウミホタル類は世界で4種知られているが、日本からは殻の後端がとがっているトガリウミホタルV. noctilucaも知られている。ウミホタルは魚の頭や内臓を使って集めることができるが、トガリウミホタルは海面を照らすと集まる。

[武田正倫]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウミホタル」の意味・わかりやすい解説

ウミホタル
Vargula hilgendorfii

顎脚綱ミオドコピダ目ウミホタル科 Cypridinidaeの海産動物。体長約 3mmで,全体が卵形。半透明のキチン質の殻が体を左右から囲んでいる。殻の間から付属肢を出して活発に泳ぐ。刺激を受けると上唇腺から発光物質(ウミホタルルシフェリン)を出し,酵素(ルシフェラーゼ)の作用を受けて青紫色に光る(→生物発光)。乾燥して保存したウミホタルは,数十年後でも水をかけると光る。日本の太平洋岸の浅海砂泥底にすみ,昼間は砂にもぐっているが,夜間活動して死魚などに群がる。ウミホタル科には深海産の種も知られており,発光する種は 4種である。(→顎脚類甲殻類節足動物

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百科事典マイペディア 「ウミホタル」の意味・わかりやすい解説

ウミホタル

ウミホタル科の甲殻類。2枚のキチン質でできた半透明の殻をもち,殻長8mm,体長3mmくらい。本体は殻の中に収まるがエビに似ている。夏〜秋に海岸近くに現れ,上唇(じょうしん)部から分泌された発光物質は海水に触れると青白く光る。太平洋沿岸の浅海に分布。

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世界大百科事典(旧版)内のウミホタルの言及

【生物発光】より

…発光バクテリアの発光反応はホタルのそれより複雑である。ウミホタルとホタルの発光反応は概略次のように示される。 植物で発光するものは少ないが菌類,細菌類などの一部にみられる。…

※「ウミホタル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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