ウチワエビ(英語表記)Ibacus ciliatus

改訂新版 世界大百科事典 「ウチワエビ」の意味・わかりやすい解説

ウチワエビ
Ibacus ciliatus

体長20cmに達する甲殻綱ウチワエビ科のエビ。体はその名にふさわしく,著しく扁平である。頭胸甲と第2触角の輪郭はほぼ円形で,周縁に多数の突起がのこぎり状に並ぶ。頭胸甲には前側角から斜めに深い切れ込みがあり,前後に分かれるが,前部の前縁に8~10歯,側縁に1~5歯,後部の側縁に10~12歯がある。雌は第5脚に小さなはさみをもつが,雄では不完全なはさみである。赤褐色ないし紫褐色で,尾扇部は黄褐色。卵は無色透明のフィロソーマ幼生として孵化(ふか)するが,後期フィロソーマは頭胸甲の幅が4cmに達する。房総半島以南,東シナ海フィリピン,南シナ海,オーストラリア東岸まで,水深70~250mの砂泥底あるいは泥底に生息する。打瀬網や機船トロール網で漁獲して食用とするが,多量には得られないので産業的価値はあまり高くない。近縁オオバウチワエビI.incisusもほぼ同海域に分布しているが,頭胸甲の後部側縁の歯数が6~7である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウチワエビ」の意味・わかりやすい解説

ウチワエビ
Ibacus ciliatus

軟甲綱十脚目セミエビ科 Scyllaridae。体長約 15cm。体は紫赤色。背腹は著しく扁平で,頭胸甲と第2触角は特に幅広い。房総半島以南,フィリピンまで分布し,水深 100m以浅の砂泥底に生息する。食用とされるが,肉量は少ない。近縁のオオバウチワエビ I. novemdentatus は淡黄褐色で,頭胸甲側縁の切れ込みが粗い(ウチワエビは 11~12,オオバウチワエビは 8)。セミエビ科は一般に多少とも扁平で,特に第2触角が特徴的である。英名では shovel-nosed lobster,slipper lobster,butterfly lobsterなど総称的に呼ばれる。(→甲殻類十脚類節足動物軟甲類

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウチワエビ」の意味・わかりやすい解説

ウチワエビ
うちわえび / 団扇蝦
[学] Ibacus ciliatus

節足動物門甲殻綱十脚目ウチワエビ科に属するエビ。体長20センチメートルに達する。房総半島以南に分布し、水深70~250メートルの砂泥底にすむ。黄海、フィリピン近海、オーストラリア東岸からも記録され、食用とされているが、いずれの海域でも市場に出回るほど多くない。体は背腹に著しく扁平(へんぺい)で、とくに頭胸甲と第2触角は幅が広く、周縁は鋸歯(きょし)状に刻まれている。頭胸甲は前側角から斜め後方に深い切れ込みがあり、その前葉の前縁に8~10歯、側縁に1~5歯、後葉の側縁に10~12歯がある。近縁のオオバウチワエビI. novemdentatusでは、頭胸甲の後葉側縁の歯が6~7である。

武田正倫]


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百科事典マイペディア 「ウチワエビ」の意味・わかりやすい解説

ウチワエビ

甲殻類ウチワエビ科のエビ。体は扁平で,団扇状。頭胸甲は板状に広がり側縁は鋸歯(きょし)状。前縁に近く1個の深い切れ込みがある。第2触角の一部も板状に広がる。色は紫色を帯びた赤褐色で,体長は20cmに達する。食用になるが肉は少ない。房総半島以南,東シナ海,フィリピン,オーストラリア東岸までの,水深70〜250mの砂泥底あるいは泥底に生息。

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