ウォーカー(William Hultz Walker、化学工学者)(読み)うぉーかー(英語表記)William Hultz Walker

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ウォーカー(William Hultz Walker、化学工学者)
うぉーかー
William Hultz Walker
(1869―1934)

アメリカの化学工学者。初めリトルArthur D. Little(1863―1935)とともにコンサルティング・エンジニア会社を経営したが、1902年マサチューセッツ工科大学(MIT)の化学工学部門の主任となり、化学工学の体系を一新して今日の化学工学の基本的骨格をつくりあげた。当時の化学技術についての科学は、応用化学としての工業化学が中心であったが、1908年に設立されたアメリカ化学工学者協会の中心であったMITでは、ウォーカーとリトルに化学工学カリキュラム編成を委嘱し、彼らは1915年に単位操作を中心とするカリキュラムを答申した。単位操作を柱とする化学工学は、化学技術の科学を、化学の一応用部門から工学の一領域として独立させ、化学工業における現場の技術を定量的に理解する道を開いたものとして高く評価される。1923年、ルイスW. K. Lewis(1882―1975)、マカダムW. H. McAdams(1892―1975)とともに化学工学の最初の標準的教科書である『化学工学の原理Principles of Chemical Engineeringを出版、これによりこの年が化学工学の成立の年ともされる。ウォーカーは、化学工学者の養成には工場実習が不可欠であるとしてこれを取り入れるとともに、研究の発展のために産業界と大学が密接な協力を行うことを主張し、MITの性格にも大きな影響を与えた。また、アメリカにおけるアセチルセルロースの工業化に初めて成功した。

[加藤邦興]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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