ウォルフ(Hugo Philipp Jakob Wolf)(読み)うぉるふ(英語表記)Hugo Philipp Jakob Wolf

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ウォルフ(Hugo Philipp Jakob Wolf)
うぉるふ
Hugo Philipp Jakob Wolf
(1860―1903)

オーストリア作曲家。スロベニアのウィンディッシュグレーツに3月13日生まれる。1875年から2年間ウィーン音楽院で学び、この間マーラーを知る一方、ワーグナーに心酔する。ウィーンの作曲家、指揮者、批評家と交際し、彼らの助力で批評家としても活動し、しばしばワーグナー賛美の記事を書いた。しかし健康に優れず短気だったため、貧乏な生活が続いた。88年から約2年間、霊感がほとばしるままメーリケアイヒェンドルフゲーテによる歌曲集、スペインやイタリアの詩による歌曲集など、200曲近くを作曲した。このころ彼の援助者ケッヘルトの夫人メラニエと不倫の恋に落ちたが、これが創作意欲を刺激したといわれる。これらの歌曲は歌手イェーガーの努力により世に広まっていったが、その病(梅毒)はしだいに重くなり、オペラ『お代官様』や歌曲集『ミケランジェロの三つの詩』を作曲したのち、ウィーンの精神科病院で1903年2月22日に世を去った。ウォルフの作品の大半は歌曲で、シューベルト以後の芸術的ドイツ・リートの最後の頂点とみなされる。そこには叙情的、宗教的な歌曲のほか皮肉ユーモアに富むものなどもあり、内容はきわめて多彩である。作曲に際しては詩がもっとも重視された。その結果、ことばの自然な抑揚がそのまま旋律となり、ピアノも雄弁に詩の内面を物語る。和声的には半音階が駆使され、リズムにも多くのくふうがなされている。

[石多正男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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