ウェレス(英語表記)Gaius Verres

改訂新版 世界大百科事典 「ウェレス」の意味・わかりやすい解説

ウェレス
Gaius Verres
生没年:前115ころ-前43

共和政末ローマの政治家。官職就任中,不正蓄財を重ねた後,前73年から3年間総督としてシチリアを統治。多様な手口全島の都市・富裕者・土地所有者を搾取した。帰任後,属州民の訴えを容れたキケロは有力門閥の妨害工作にもかかわらず彼を不当搾取罪で告発し,自らシチリアで膨大な証拠類を収集。ウェレスは第1次公判後敗訴を認めてマッシリアに退去した(前70)。キケロの弁論は第2次公判用も含めて全巻現存し,属州機構,シチリア社会に関する基本史料である。キケロは彼を怪物として描くが,ウェレスの行動と当時の標準との隔りは測定が難しく,特にスパルタクス反乱の危機的状況下だけに評価は分かれる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウェレス」の意味・わかりやすい解説

ウェレス
うぇれす
Gaius Verres
(前115ころ―前43)

ローマ共和政末期の政治家。父の代からの元老院議員。紀元前84年にコンスル統領カルボーの部下の財務官、前80年にキリキア総督ドラベラの副官、前74年に法務官などを歴任。前73年から前71年まで法務官代理官の資格でシチリアの総督となったが、職権を乱用してシチリア住民を搾取したとして、前70年に雄弁家キケロによりローマの「不法取得返還請求のための常設法廷」で弾劾された。裁判なかばにして自己の有罪を認め、マッサリア(現マルセイユ)に亡命、ここで余生を過ごした。このときのキケロの弾劾演説が現存するが、当時のシチリアの状況およびローマの海外支配を知る重要史料となっている。

[吉村忠典]

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ウェレス」の解説

ウェレス
Gaius Verres

?~前43以後

ローマ共和政期の政治家。シチリア総督在任中の前73~前71年,私腹を肥やすために属州民を組織的に搾取し,帰国して不当取得法廷に告発された。キケロが告発弁論を行い,敗訴してガリアに亡命した。キケロの弁論が現存するので悪徳の総督として有名になった。

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