ウェッデルアザラシ(英語表記)Leptonychotes weddellii; Weddell seal

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウェッデルアザラシ」の意味・わかりやすい解説

ウェッデルアザラシ
Leptonychotes weddellii; Weddell seal

食肉目鰭脚亜目アザラシ科ウェッデルアザラシ属。体長は雄約 2.9m,雌約 3.3m。体重は 400~450kgであるが,季節的な変動がある。出生体長は約 1.5m,出生体重は約 29kgである。体毛は黄褐色または茶ねずみ色で,白色あるいは濃色の不規則な斑が散在しており,斑が集まって縞 (しま) 模様を呈することもある。背部,四肢,顔面は濃色。体は細長く,頭部は丸みを帯び小さい。鼻口部は短く,鼻孔は吻端に位置する。前肢はオール状で先がとがり,形状は鰭 (ひれ) に近い。上顎と下顎門歯が各4本,犬歯が各2本,頬歯が各 10本ある。頬歯はとがり,上下の歯が噛み合う。幼獣は群れで行動するが,成獣は単独を好む。繁殖期は9~11月で,交尾は水中で行われる。定着氷の上で生活し,氷に穴を開けて海中氷上を行き来する。冬は海中のほうが温かいため海中で過し,氷に穴を開けて呼吸する。主として魚類を捕食するが,小型のスルメイカ類や無脊椎動物も食べる。南極大陸周辺の氷縁を中心に周極分布する。南極収束線を限界とし,流氷に乗って沖合いへ移動する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウェッデルアザラシ」の意味・わかりやすい解説

ウェッデルアザラシ
うぇっでるあざらし
Weddel seal
[学] Leptonychotes weddelli

哺乳(ほにゅう)綱鰭脚(ききゃく)目アザラシ科の動物。比較的大形のアザラシで、体長雌雄とも約2.5メートルに達する。南極アザラシ4種のうちでもっとも南に分布し、厚い定着氷域内で一年中生息する。呼吸孔を確保するため氷に歯で穴をあける習性がある。このため老獣の死亡率は高い。冬期間は氷上に出ない。繁殖期は南極の春にあたる10月中旬である。海の深い南極海の底魚を捕食するため潜水は得意で、深度600メートル、30分間の記録がある。

[内藤靖彦]


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世界大百科事典(旧版)内のウェッデルアザラシの言及

【アザラシ(海豹)】より

…ヒョウアザラシも雌雄ともに体長2.7m,体重500kgになる。カニクイアザラシ,ロスアザラシ,ウェッデルアザラシともに2mを超え大型である。小型の種は分布域の限定されたところに多く,もっとも小型の種は陸封されたバイカルワモンアザラシとカスピカイワモンアザラシで体長1.2~1.3m,体重50~60kgである。…

【ナンキョクアザラシ】より

…鰭脚(ききやく)目アザラシ科Lobodontini族の哺乳類で,南極海に分布するカニクイアザラシLobodon carcinophagusをはじめ,ウェッデルアザラシLeptonychotes weddelli,ヒョウアザラシHydrurga leptonyx,ロスアザラシOmmatophoca rossiの4種の総称。分類的には4種ともモンクアザラシに近い。…

【ワモンアザラシ(輪紋海豹)】より

…近縁のバイカルワモンアザラシは世界最小の海獣類として知られる。定着氷域に生息し,南極の定着氷域に生息するウェッデルアザラシ同様に氷の間に呼吸孔を保持する。外敵のいない南極ではウェッデルアザラシは子を海氷上に置いているが,ホッキョクグマやホッキョクギツネのいる北極では,本種は氷板の折り重なった隙間を利用した巣に子を生み,保護する。…

※「ウェッデルアザラシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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