ウェストミンスターアベー(英語表記)Westminster Abbey

改訂新版 世界大百科事典 の解説

ウェストミンスター・アベー
Westminster Abbey

ロンドンのウェストミンスター区にある教会で,正称は,セント・ピーター教会Collegiate Church of Saint Peter。ウィリアム1世(征服王)以来,歴代イギリス国王(女王)戴冠の場所となった。7世紀にペテロをまつった教会を起源とし,ベネディクト会に属した。11世紀中葉,エドワード懺悔王ノルマン様式の教会を建立。13世紀半ば,ヘンリー3世によりランス大聖堂にならうフランス・ゴシック様式改築(1269献堂)がなされ,それが現在の建物の基礎となった。身廊交差廊とも3廊式で,内陣を囲んで周歩廊と五つの放射状祭室がある。身廊の天井高(31m)はイギリスの教会堂中最高で,14世紀末にイェーベルHenry Yeveleが完成。東端のヘンリー7世礼拝堂(1503-19)は,懸垂型辻飾を伴う華麗なファン(扇状)・ボールトでおおわれ,垂直様式Perpendicular Style(後期イギリス・ゴシック)の代表傑作。ここに多くの国王(女王)が葬られた。西正面双塔は,18世紀ホークスムアの作である。この教会に埋葬されることは大きな名誉とされ,南袖廊の〈詩人コーナー〉には,チョーサー,シェークスピア,ミルトンなど多数の著名文人の墓碑墓石を見る。同袖廊南端に接する僧会会議室は,長く下院議場に当てられた。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のウェストミンスターアベーの言及

【ウェストミンスター】より

…元来は沼沢地であったが,11世紀ここにエドワード懺悔王が〈ウェストミンスター(西の修道院)〉を建てたのが,地名の起源。これがウェストミンスター・アベーとして発展し,また同じエドワード懺悔王によって宮殿も建てられ,のちに議会がそのセント・スティーブン礼拝堂St.Stephen’s Chapelで開かれるようになった。宮廷は16世紀に隣接のホワイトホール宮殿に移ったが,ウェストミンスターは宮廷と政治の中心でありつづけた。…

【ゴシック美術】より

…すでにノルマンディーとともに,イギリスはその力強いロマネスク建築にリブ・ボールトをとりいれ,ダラムの大聖堂(1093‐1133)のような大規模なものを実現して,初期ゴシック建築の形成に影響するところが多かったが,フランスのゴシック美術が確立されるに及んで,一部では逆にその影響をうけいれた。カンタベリー大聖堂改築の際フランスの工匠ギヨーム・ド・サンスGuillaume de Sensの指導のもとに新様式で内陣(1175‐92)が建てられ,13世紀にはイギリス王の戴冠式をあげるウェストミンスター・アベーがランス大聖堂を範として建てられ(内陣1245‐,身廊1298‐),ヘンリー3世のセント・ステファン礼拝堂(1269,現存せず)はパリのサント・シャペルにならった名建築であった。しかし,これらのフランス様式にならったものでも,イギリス的な特徴を失わない。…

【チューダー様式】より

…1485年から1558年エリザベス1世の即位までを中心期とするチューダー朝の建築様式の名称で,イギリス・ゴシックの垂直様式を受け継ぐが,しだいに大陸各地とくにドイツ,イタリアから導入されたルネサンス様式と結合した形態に移行する。ヘンリー8世の治世(1509‐47)には,華麗な垂直式のキングズ・カレッジ礼拝堂(1446‐1515,ケンブリッジ)と,イギリス・ゴシックの記念碑ともいうべきウェストミンスター・アベーが完成した。しかし元来,国王は芸術に対してはきわめて関心が薄かったため,当時のイギリスの壮麗な建築は,おもに大貴族や富裕市民によって首都を離れた彼らの領地に建てられる結果となった。…

【ホークスムア】より

C.レンの助手を務め,レンの没後はバンブラーの助手としてブレニム宮殿,カスル・ハワードの建築を行う。自己の作品にはカスル・ハワードの霊廟(1736),ロンドンのブルームズベリーのセント・ジョージ教会(1730),ウェストミンスター・アベーの西正面の塔の部分(1734)などがある。特異な比例感覚の作品を残したことで,その意義を見直されつつある。…

※「ウェストミンスターアベー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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