ウェイン(John Wain、小説家、詩人、批評家)(読み)うぇいん(英語表記)John Wain

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ウェイン(John Wain、小説家、詩人、批評家)
うぇいん
John Wain
(1925―1994)

イギリスの小説家、詩人、批評家。ストーク・オン・トレントに生まれ、オックスフォード大学卒業。1973~78年オックスフォード大学詩学教授。初めはK・エイミス、J・ブレイン、J・オズボーンらと並ぶ「怒れる若者たち(アングリー・ヤングメン)」の一人とみられたが、むしろ空虚な現代文化に対して人間の尊厳を守ろうとする常識人である。優れた描写力と、批評家としての明晰(めいせき)な判断力が特徴。地方的な文化や人生の枠を脱するとともに、現代イギリス社会の批判者に転じた。大成功を収めた処女作の小説『急いで下りろ』(1953)は、大学を出ながら安定した地位につくのを拒否する青年の人生をピカレスク悪漢小説)風に描いたもの。小説にはそのほかに『親父(おやじ)を殴り殺せ』(1962)、『若者たち』(1982。ウィットブレッド賞受賞)、『飢餓の世代』(1994)など。詩人としてはC・S・ルイス、トールキンらとともに『インクリング』誌に拠(よ)り、また第二次世界大戦後の詩人グループ「ザ・ムーブメント」の一員とみられている。詩集に『神の前に泣け』(1961)などがある。ほかに自伝『軽やかに走って』(1962)、評伝サミュエル・ジョンソン』(1974)もある。

[小野寺健]

『中川敏訳『親父を殴り殺せ』(1969・晶文社)』『北山克彦訳『急いで下りろ』(1971・晶文社)』『米田一彦・斎藤衛・尾崎寄春訳『シェイクスピアの世界』(1973・英宝社)』『園部明彦・吉元清彦・吉井三夫訳『J.ウェイン短篇集』(1974・太陽社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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