日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ウァレンティニアヌス(1世)
うぁれんてぃにあぬす
Valentinianus Ⅰ
(321―375)
ローマ皇帝(在位364~375)。パンノニア出身。皇帝ヨウィアヌスFlavius Jovianus(331ころ―364。在位363~364)の親衛隊の一士官であった。帝の死後皇帝に選ばれると、弟のウァレンスを東の共治帝とし、彼自身は西方を統治した。残酷で短気であったといわれるが、貴族の不正を正し、下層民保護のための政務官を創設、宗教面でも寛大な姿勢を示すなど善政を行った。彼の時代には異民族の侵入や反乱が絶えなかったが、彼はそれらの鎮圧に尽くし、ガリアのアラマン人との戦いをはじめ、イリリア、ブリタニア、アフリカなど各地で交戦、多大の戦果を収めた。375年グアディ人との戦争のおり、その使者との会見中に卒中で急死した。
[島 創平]