インラック・チナワット(英語表記)Yingluck Shinawatra

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「インラック・チナワット」の意味・わかりやすい解説

インラック・チナワット
Yingluck Shinawatra

[生]1967.6.21. サンカムペーン
タイの実業家,政治家。首相在任 2011~14)。中国人家系の裕福な家庭に生まれる。9人兄弟の末っ子。父は 1960年代末から 1970年代半ばまで国会議員を務めた。兄のタクシン・チナワットも国会議員で,閣僚を歴任したのち首相に就任した(在任 2001~06)。1988年にチェンマイ大学を卒業したのちアメリカ合衆国のケンタッキー州立大学に学び,1991年に行政学修士号を取得した。タイに帰国後,チナワット家のさまざまな同族企業で働いた。1995年にタイの実業家アヌソルン・アモルンチャトと結婚。一族の所有する大規模な電気通信事業会社の子会社で社長を務めていた 2006年,親会社が売却され一族は巨額の利益を得る。しかし売却益の処理をめぐって物議をかもし,同年9月にクーデターで兄タクシン失脚。与党だったタイ愛国党は非合法化され,2008年末に後継政党としてタイ貢献党 PPTが結成された。2011年,政治経験がないにもかかわらず PPTから指名を受けて当選し,党を勝利に導いた。同党代表に就任したのち 2011年8月にタイ史上初の女性首相に選出され,プミポン・アドゥンヤデート国王の認証を受けて正式に首相に就任した。2013年,国外逃亡中の兄タクシンに恩赦を与える法案に対する反政府組織の抗議が過熱し,2014年にかけて政府は機能停止状態に陥った。2014年5月,人事をめぐる職権乱用のかどで憲法違反の判断がくだされ失職,暫定軍事政権が樹立された。国外逃亡中の 2017年9月,首相在任時の政策であった農村からの米買取補助金制度での不正が問われ,禁固 5年の実刑判決を受けた。

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