インフレ・ギャップ
inflationary gap
総需要が総供給をこえる分。ある与えられた供給能力 (完全雇用所得) に対応する意図された貯蓄に比べて,投資,財政の赤字支出,輸出超過の合計が大きい場合,インフレ・ギャップが存在するといい,逆に意図された貯蓄のほうが大きい場合,デフレ・ギャップが存在するという。デフレ・ギャップの場合には,企業はその生産水準を需要水準に調整することができるが,インフレ・ギャップの生じている場合には生産を増加することができず,その影響はすべて物価水準に現れ,一般的な物価水準の上昇が生じインフレーションとなる。これを J. M.ケインズは「真のインフレーション」と呼んだ。インフレ・ギャップ,デフレ・ギャップの概念は,ケインズ派の貯蓄・投資の所得決定理論を背景として生れてきたものであり,その理論的分析はケインズの『戦費調達論』 How to pay for the War (1940) に始る。またこの言葉が政策面で初めて用いられたのは,1941年4月イギリスの大蔵大臣の下院における予算演説においてであった。
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「インフレ・ギャップ」の意味・わかりやすい解説
インフレ・ギャップ
inflationary gapの略。ある期間の国民所得のうち,購入に向けられずに貯蓄を意図される部分は有効需要とはならず,デフレ的要因であるのに対し,財政の赤字,投資,輸出超過は所得を形成しながらもその期間には購入の対象となるものを供給せず,有効需要となってインフレ的要因となる。前者を後者が超過する部分がインフレ・ギャップ(逆の場合はデフレ・ギャップ)で,需要が供給を超過して物価騰貴を生じる。もし過去の財の供給,遊休資源の稼働による供給があれば,インフレ・ギャップによる物価の騰貴は抑制されうる。
→関連項目インフレーション
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「インフレ・ギャップ」の解説
インフレ・ギャップ
均衡国民所得(総需要と総供給を一致させる国民所得)が完全雇用所得(完全雇用を達成可能な国民所得)を下回る場合、経済内には失業が生じ、完全雇用所得において、総需要<総供給の関係が成立する。このギャップのことをデフレ・ギャップという。逆に均衡国民所得が完全雇用所得を上回る場合、経済は完全雇用となり、完全雇用所得において、総需要>総供給の関係が成立する。このギャップのことをインフレ・ギャップという。
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