インバネス(英語表記)inverness

精選版 日本国語大辞典 「インバネス」の意味・読み・例文・類語

インバネス

〘名〙 (inverness) 長くてゆったりしたそでなしでケープ付きの男性外套。これを長くして和服用にしたものを二重まわしという。本来燕尾服の上にのみ着用するもの。とんび。《季・冬》
魔風恋風(1903)〈小杉天外〉前「茶色のインバネスに同じ色の背広

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デジタル大辞泉 「インバネス」の意味・読み・例文・類語

インバネス(inverness)

男性用のケープ付き袖なし外套。スコットランド北部の都市インバネスにちなむ名。明治元年に輸入、改造されて男性の和服用防寒コートとして用いられた。とんび。二重回し 冬》「子に靴を穿かす―地に触り/誓子
[補説]地名別項。→インバネス

インバネス【Inverness】[地名]

英国スコットランド北部の都市。北海のマリー湾に注ぐネス川の河口に位置する。古くからハイランド地方の中心都市として知られ、長らくスコットランド王の居城が置かれた。インバネス城インバネス大聖堂をはじめとする歴史的建造物があるほか、南西部郊外にネス湖がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「インバネス」の意味・わかりやすい解説

インバネス
inverness

19世紀の男子洋服コート。袖の代りにケープが付く。名はスコットランドの都市インバネスにちなむもので,幕末に洋服をとり入れた日本でもこれが着用され,その形から鳶(トンビ)と呼ばれた。福沢諭吉が片山淳之助の名で著した《西洋衣食住》(1867)に,〈合羽 マグフエロン 日本ニテ俗ニトンビト云〉とある。このケープ式袖付は和服の上に着られるので,和装防寒コートに利用された。明治初年から,その着用が見られる。大阪の豪商松本重太郎は1870年(明治3)に,心斎橋通りでトンビ商を開いた。明治中期には二重回しとも言い,丈も変化し,黒地から縞物へ,また襟にラッコの毛皮をつけるのも流行した。その後,インバネスは20世紀に入ってからの西欧では日常服に用いず,燕尾服用コートとなった。日本でも洋装には使わず和装のトンビ,二重回しとして残った。
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インバネス
Inverness

イギリス,スコットランド北部にあるハイランド州(旧,インバネス州)の州都。人口5万6557(1981)。モレー湾に注ぐネス川の河口に位置し,またカレドニア運河の入口にもあたるため,ハイランド地方の商業・交通の中心地となっている。海港を有し,羊毛,車両,ウィスキー醸造などの工業も発達する。古代にはピクト人の主都であり,11世紀以降はマクベス城下の王立都市として繁栄した。クロムウェルが建設した要塞も残るが,現在の城は1835年に建設されたものである。夏にはネス湖などへの観光基地としてにぎわう。
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百科事典マイペディア 「インバネス」の意味・わかりやすい解説

インバネス

英国,スコットランド北東,マリー湾の奥に位置するハイランド州の州都。カレドニア運河によってネス湖を経てリニ湾に通じる。シェークスピア悲劇のマクベスがダンカン王を殺害したとされる城があった。造船・醸造・紡績工業がある。4万1000人(2001)。
→関連項目ネス[湖]ハイランド

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「インバネス」の意味・わかりやすい解説

インバネス
Inverness

ケープのついた袖なしの外套。丈が長く,ゆったりとしている。名称は,スコットランドのインバーネス地方に由来する。日本には明治初期に移入され,男性の外套として二重回し,とんびなどと呼ばれて明治の中頃に流行した。

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