イワン4世(雷帝)(読み)イワンよんせい[らいてい](英語表記)Ivan IV Vasil'evich, Groznyi

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イワン4世(雷帝)」の意味・わかりやすい解説

イワン4世(雷帝)
イワンよんせい[らいてい]
Ivan IV Vasil'evich, Groznyi

[生]1530.8.25. モスクワ
[没]1584.3.18. モスクワ
ロシアのモスクワ大公 (在位 1533~84) ,ロシアのツァーリ (在位 47~84) 。ワシーリー3世の子。3歳で即位,幼少の頃大貴族冷遇で屈辱を得た経験により,彼らに対する復讐を誓う。 1547年初めて正式にツァーリの称号を採用し親政を開始,下級廷臣 A.F.アダーシェフと宮廷司祭シリベストルを中心とする「特別会議 (イズブランナヤ・ラーダ) 」によって,世襲貴族の権力的基盤を破壊する仕事に着手した。 50年新法令集を発布,地方行政で貴族支配を保証していた「扶持制度 (コルムレーニエ ) 」に手を加え地方行政を封地士族 (ドボリャニン ) の手にゆだねた。同時に軍制改革を断行,モスクワ部隊,ストレリツィ (銃兵隊) を創設して大公直属の武力を充実させ,その権力確立の基礎を築いた。以後,封地を求める士族,商圏の拡大を望む商人の意向に沿って征服戦争に乗出し,52年カザン,56年アストラハンを併合,ボルガ水域一帯の支配権を掌中に収め,バルト海の出口を確保するためリボニア騎士団と衝突,長い戦闘に入った。このリボニア戦争 (58~83) の最中,君主意志全土に伝達する一種の身分制議会「全国会議 (ゼムスキー・ソボール ) 」と,戦争継続を困難に陥れた反対派貴族の没収世襲地から成る「オプリチニナ」を設けた。後者は大公に忠誠を誓う士族に封地として分与され,貴族を弾圧する際の手先オプリチニク」を生み出し,ツァーリの専制権力を強化する機能を果したが,このオプリチニナの創設と長引く戦争とは国土を著しく疲弊させた。貴族に対する徹底的な恐怖政治のため,「雷帝 (グローズヌイ) 」と呼ばれた。

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