イワツバメ(英語表記)house martin
Delichon urbica

改訂新版 世界大百科事典 「イワツバメ」の意味・わかりやすい解説

イワツバメ
house martin
Delichon urbica

スズメ目ツバメ科の鳥。山地海岸の垂直な岩場多数群生するのでこの名がある。ヨーロッパの都市には昔から高層建築が多く,これに好んで営巣するため,市街地にもふつうにすんでいる。第2次世界大戦後は,日本でも本種が市街地などに進出し,一部ではツバメにとって代わる傾向が見られる。ユーラシア大陸の温帯から亜寒帯アフリカ北部で繁殖し,温帯以北のものは熱帯から南半球にかけて越冬する。日本では,3月中旬~5月上旬に渡来,9月上旬~10月下旬に渡去する夏鳥で,九州以北で繁殖する。なお,紀伊半島や九州などでは越冬する個体もある。全長約13cm。ツバメより小型で,上面は青色光沢ある黒色,腰は白く,下面も汚白色。尾は短く浅い燕尾,脚にはあしゆびの先まで白い羽毛がある。ツバメより高空域を好み,よくアマツバメと混群になる。自然の洞窟やコンクリート建造物に集団で営巣する。深いわん形の泥の巣をつくり,1腹3~4卵を産む。2週間抱卵,約3週間育雛(いくすう)する。ジュリリと濁った声で鳴く。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イワツバメ」の意味・わかりやすい解説

イワツバメ
Delichon dasypus; Asian house martin

スズメ目ツバメ科。全長 12cm。頭上,背,,尾羽が黒く,胸腹部と腰が白い。尾羽は浅い燕尾形。海岸や高山岩壁,ビルや橋などに営巣し,集団繁殖する。渡り鳥で,ロシア南東部から日本,朝鮮半島東アジアヒマラヤ山脈山麓で繁殖し,ヒマラヤ南部やインド中東部,東南アジアで越冬する。日本では夏鳥として渡来し,北海道本州四国地方九州地方で繁殖し,少数は本州中部以南の暖地で越冬している。近年,開発による営巣場所のビルや陸橋の増加に伴い,繁殖地が平野部にまで広がっている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イワツバメ」の意味・わかりやすい解説

イワツバメ
いわつばめ / 岩燕
house martin
[学] Delichon urbica

鳥綱スズメ目ツバメ科の鳥。イワツバメ属3種中の1種。全長約14.5センチメートル。背面は黒色で腰が白く、尾羽は短く、切れ込みは浅い。下面は白色、のどと上胸およびわきは汚白(おはく)色を呈する。ツバメより小さく、足は白毛で覆われる。日本には夏鳥として渡来し、山地の岩壁、海岸の崖洞(がいどう)、河川の橋梁(きょうりょう)、あるいは人家の軒などに、泥を固めた壺(つぼ)状の巣を集団でつくる。冬季、日本各地に滞留するものも少なくない。ユーラシア大陸一帯に繁殖地があり、冬季はアフリカ、インド、東南アジアに分布する。

[坂根 干]

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百科事典マイペディア 「イワツバメ」の意味・わかりやすい解説

イワツバメ

ツバメ科の鳥。翼長10.5cm,ツバメよりやや小型。東アジアで繁殖し冬は南方へ渡る。日本では全国で繁殖し,岩壁,人家の軒など人工建造物に土で巣をつくる。冬は南方へ渡るが,近年は暖地で越冬するものもある。多数群生し,飛びながら昆虫を食べる。

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世界大百科事典(旧版)内のイワツバメの言及

【ツバメ(燕∥玄鳥)】より

…声はチュビッとよくとおり,さえずりは複雑である。種小名のrusticaは〈田舎の〉という意味で,ヨーロッパでイワツバメDelichon urbica(都会のツバメ)が都市部に営巣するのに対し,田園地帯で営巣することによる。
[ツバメ科]
 ツバメ科は世界で約80種があり,ツバメ亜科とカワラツバメ亜科に分けられる。…

※「イワツバメ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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