イワシ(鰯)(読み)イワシ

百科事典マイペディア 「イワシ(鰯)」の意味・わかりやすい解説

イワシ(鰯)【イワシ】

ニシン科のマイワシウルメイワシ科のカタクチイワシウルメイワシなどの総称。代表的なマイワシは全長20cm余。背面は暗青色,体側に7個内外の小黒斑が並ぶことからナナツボシとも呼ばれる。サハリン南部〜九州,沿海州,朝鮮半島に分布する沿岸性の表層回遊魚。定置網巾着(きんちゃく)網など漁法がいろいろある。 イワシは,江戸時代にその製品である干鰯(ほしか)や〆かす金肥(きんぴ)と呼ばれるほど重要な産物で,大正時代に合成肥料が開発されるまで,米や綿などの農作物の肥料として大きな役割を果たしていた。その後,第2次世界大戦前には魚油の原料としての需要が高まり,現在では養殖魚の餌としたり,フィッシュミール(魚粉)に加工して家畜飼料としてほとんどが消費されている。食用とされる割合は低い。 大きな群れを作って回遊するイワシは,江戸時代から今日まで日本の漁業を支えてきたが,その間も,およそ数十年から100年を周期として増減を繰り返してきた。1930年前後には日本全国で十数年にわたって豊漁が続いたマイワシが,1965年に史上最低の1万tを切った。その後,1973年以降急上昇し,1978年には第2次大戦前の最高水準を超えて164万tに達した。その後1980年代には数年間にわたって年間400万t以上の漁獲量となり,日本の総漁獲量の3割以上を占めていたマイワシは,史上最高を記録した1988年の450万tをピークに1990年代に入って急減した。1992年には222万tと半減,1994年には119万tとピーク時の4分の1近くに減少,翌1995年には70万tを割っている。水産庁中央水産研究所は1992年4月,マイワシ資源が1988年をピークに減少期に入ったという見解を発表した。 資源減少の原因には乱獲,環境の変化,魚種の交替など諸説あるが,解明にはいたっていない。多獲性大衆魚であったマイワシ資源の減少は価格の高騰招き養殖業や畜産業にまで大きな影響を及ぼしている。→沖合漁業
→関連項目サーディン

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