イフワーンアッサファー(英語表記)Ikhwān al-Ṣafā'[アラビア]

改訂新版 世界大百科事典 「イフワーンアッサファー」の意味・わかりやすい解説

イフワーン・アッサファー
Ikhwān al-Ṣafā'[アラビア]

〈純粋な兄弟たち〉を意味し,イスマーイール派の宗教的政治秘密結社。その成立年代は明らかではないが,10世紀にイラクバスラ本拠として活躍した。イスマーイール派運動に理論的根拠を与えるために同派に属した哲学者・思想家がこの組織を結成し,10世紀後半に共同執筆によって《ラサーイル・イフワーン・アッサファー》という膨大な百科全書的教書をアラビア語で著した。この教書は4部52編からなり,第1部は序論数学・論理学,第2部は霊魂論・自然哲学,第3部は形而上学,第4部は神秘学・占星術などを扱っている。新プラトン派の強い影響を受け,イスマーイール派教義とギリシア哲学との融合を意図して執筆されたこの書は,イスラム世界の思想家たちに非常な影響を及ぼし,11世紀初めにはスペインにまで及んだ。アッバース朝カリフは異端の書として焚書を命じたが,作品は生き残った。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のイフワーンアッサファーの言及

【自然誌】より

…これは中世においても知識の源泉として広く普及した。イスラム圏では,10世紀末に〈純潔兄弟団(イフワーン・アッサファー)〉と呼ばれる秘密結社の知識人集団が自然誌《純潔兄弟の学(ラサーイル・イフワーン・アッサファー)》を著したが,さらに膨大で影響力の大きかったのは11世紀のイブン・シーナーで,彼の自然誌は《治癒の書》と題された18巻の大著である。12世紀以後ヨーロッパでも自然誌への関心が高まり,プリニウスの抜粋本が多くつくられたほか,13世紀に入ってバーソロミューBartholomewの《事物の特性について》,ザクセンのアルノルトArnold von Sachsenの《自然の限界について》,カンタンプレのトマThomas de Cantimpréの《自然について》,バンサン・ド・ボーベの《自然の鏡》,アルベルトゥス・マグヌスの《被造物大全》など多くの自然誌を生んだ。…

※「イフワーンアッサファー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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