イノンド(読み)いのんど(英語表記)dill

翻訳|dill

精選版 日本国語大辞典 「イノンド」の意味・読み・例文・類語

イノンド

〘名〙 (eneldo から) セリ科多年草。ふつう一年草として栽培する。地中海周辺地域原産薬用および調味用植物。高さ六〇~九〇センチメートル。葉は線状に細長く裂けている。夏、黄色の小さな花が傘形に集まって咲く。実は扁平な長円体で、縁に翼をもつ。葉、茎、実は香味料とするほか鎮痛去痰薬とする。ひめういきょう。ジラディル
※菜譜(1704)上「蛮語にいのんどと云物あり、茴香同類にして別なり」

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デジタル大辞泉 「イノンド」の意味・読み・例文・類語

イノンド

《〈スペインeneldoから》セリ科の多年草。葉は羽状に切れ込む。夏、黄色い小花多数つける。果実楕円形で平たく、翼があり、ピクルスなどの香辛料や薬用にする。南ヨーロッパイランの原産で、江戸中期に渡来姫茴香ひめういきょう。ディル。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イノンド」の意味・わかりやすい解説

イノンド
いのんど
dill
[学] Anethum graveolens L.

セリ科(APG分類:セリ科)の一、二年草。和名はスペイン語のeneldoからきているといわれ、英名のdillからディル、ジラ(蒔蘿)ともいわれる。ヒメウイキョウともいう。茎は枝分れして高さ1メートルほどになる。葉は3回羽状に裂け、裂片は細長く糸状。夏に枝先に黄色の小花を多数開く。果実は楕円(だえん)状球形で扁平(へんぺい)、長さ3~5ミリメートルで黒褐色、白い縦筋が入る。原産地はインドからイランに及ぶ地域、またはヨーロッパ地中海沿岸から南ロシアにかけての地域とされる。メソポタミアや古代エジプトで薬草として栽培され、中国でも8世紀ころから記録がある。日本へは江戸中期にヨーロッパから渡来した。一方、中国からも漢方薬として伝えられた。果実をスパイスとしてソースやカレー粉に混ぜ、またケーキやパンの香りづけに使う。漢方では蒔蘿実(じらじつ)(子(し))とよび、興奮剤や駆風剤とする。カルボンを主成分とする精油3、4%と脂肪油17%を含む。若い葉にも芳香があり、スープやソース、ピクルスなどに風味を添えるハーブとして用いる。

[星川清親 2021年11月17日]


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改訂新版 世界大百科事典 「イノンド」の意味・わかりやすい解説

イノンド
dill
Anethum graveolens L.

果実や葉を香辛料として用いるセリ科の一~二年草。キャラウェーとともにヒメウイキョウとも呼ばれる。日本には江戸時代中期にヨーロッパから渡来し,スペイン名のeneldoからイノンドの名が生まれた。一方,中国からも漢方薬として渡来し,蒔蘿(じら)の名でも呼ばれる。インドからイランにおよぶ地域やヨーロッパ地中海沿岸から南ロシアにかけての地域が原産地とされる。葉は3回羽状に裂ける複葉で,裂片は細長い。茎は枝分れして高さが1m近くになり,夏に枝先に黄色の小花を多数つける。果実は長さ3~5mmの扁平な楕円形で,縦に白い筋がはいる。春に種子をまき,7月末ころ果実が未熟のうちに刈り取り,干して追熟させて果実を採る。果実はソースやカレー粉に混ぜ,ケーキやパンの香りづけとする。漢方では蒔蘿子と呼び,興奮剤,駆風剤とする。若い葉を摘んでスープやソース,ピクルスの香りづけに用いる。
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百科事典マイペディア 「イノンド」の意味・わかりやすい解説

イノンド

ディルとも。セリ科の一〜二年草で,西アジア,地中海沿岸原産。葉は羽状複葉,茎は高さ1mになり,夏に多数の小花をつける。果実や葉を香辛料とする。果実はソースやカレーに混ぜ,若い葉はスープ,ピクルスの香付けに用いられる。キャラウェーとともにヒメウイキョウとも呼ばれる。
→関連項目ディルシーズ

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