知恵蔵 「イエメン情勢」の解説
イエメン情勢
以上のことから、現在(15年5月時点)のイエメン情勢は、「フーシ、サレハ前大統領を支えるシーア派イラン」と「ハディ大統領を支えるスンニ派サウジアラビア」の代理戦争の様相を呈しているといわれる。そのすき間をぬって、国際テロ組織アルカイダ系の「アラビア半島のアルカイダ」(AQAP)が南部で勢力を拡大しており、内戦状態を脱せないシリアや過激派組織「イスラム国」(IS)の脅威にさらされるイラクの二の舞いに成りかねないと懸念されている。イエメン南東部のハドラマウトは、オサマ・ビンラディンの父の出身地でもある。
一方、混乱の起因を「シーア派対スンニ派」という宗派間対立に帰するのは浅薄な見方という声もある。1967年の独立以前から続く有力部族間の対立や、90年の南北統一以後も収まらない旧北・旧南の出身者間の確執、利権争いなどが根底にあるという分析だ。イエメンは中東の最貧国で、石油・天然ガスの産出量も極めて少ない。
(大迫秀樹 フリー編集者/2015年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報