アンチダンピング法(読み)アンチダンピングほう(英語表記)anti-dumping law

改訂新版 世界大百科事典 「アンチダンピング法」の意味・わかりやすい解説

アンチ・ダンピング法 (アンチダンピングほう)
anti-dumping law

ダンピングとは,一般的には不当廉売のことであるが,アンチ・ダンピング法とは,国際的に行われる不当廉売行為の禁止を内容とする法律である。現在,アンチ・ダンピング法は多くの国々において施行されているが,重要なものとしては,世界に先がけて1916年に制定されたアメリカのアンチ・ダンピング法,EUヨーロッパ連合)のそれ,カナダ,オーストラリアのそれ,および日本の関税定率法における不当廉売関税規定などをあげることができるであろう。これらの各国のアンチ・ダンピング法においては,ほぼ共通要件が定められている。その第1は価格差の存在であり,ある国に所在する企業が,ある商品をその国内市場においては一定の価格で販売し,同一商品の同一量を他国へ輸出する場合に価格を下げるならば,国内向販売と輸出向販売においては,価格差が存在することになる。このような価格差があることが,アンチ・ダンピング法を発動する際の要件のひとつである。アンチ・ダンピング法発動の第2の要件は,このような価格差を設けた輸出により,輸入国の国内産業が被害を受けることである。ここでいう被害とは,市場シェアの減少,利益の低下ないし喪失,価格の低下などである。このような要件が備わる場合は,輸入国政府は,当該輸入品に対して,高い国内販売価格と低い輸出価格の差額に相当する特別関税を課する。

 なお,ダンピングの規制に関しては,〈関税と貿易に関する一般協定(GATT(ガツト))〉に規定があり,また,東京ラウンド,さらにウルグアイ・ラウンドの交渉において国際的ダンピング防止協定が締結されている。これらは,各国がアンチ・ダンピング法を発動する際に守るべき事項(たとえば,調査期間は原則として1年以内に限定する,など)を規定しているもので,これらにより,各国のアンチ・ダンピング法の発動があまりにも国内産業保護に傾くことがないよう配慮がなされている。世界貿易機関WTO。1995年発足)の〈アンチ・ダンピング協定〉でも,その運用手続がより明確にされている。
ダンピング
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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