アンチ・テアトル(英語表記)anti-théâtre

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アンチ・テアトル」の意味・わかりやすい解説

アンチ・テアトル
anti-théâtre

伝統的な作劇法と絶縁し,真に演劇固有のものと呼べる手法で人間の存在に近づこうとする演劇。主義,運動としてまとまったものでなく,第2次世界大戦後,フランスを中心に欧米諸国に広がっていった共通傾向をさす。従来の意味での筋書も人物の設定も,また心理的,倫理的,社会的な問題の提起や分析もなく,時間も場所も曖昧な状況のなかで,個性背景も失った人物たちが異様で無意味な行動を繰返す。こうした非現実的なイメージの連なりを通じて表現されるのは,人間の普遍的な苦悩,人間存在の不条理とそれが与える不安の感情である。代表的作家は,E.イヨネスコ,S.ベケット,A.アダモフ,F.アラバルら。

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百科事典マイペディア 「アンチ・テアトル」の意味・わかりやすい解説

アンチ・テアトル

ヌーボー・テアトル

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アンチ・テアトル」の意味・わかりやすい解説

アンチ・テアトル
あんちてあとる

不条理劇

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のアンチ・テアトルの言及

【アダモフ】より

…ストリンドベリの影響を受けて劇作を始め,かたわらビュヒナーの《ダントンの死》を翻訳。50年《大小の作戦》と《侵入》が初演され,52年《パロディ》がロジェ・ブランによって演出されるに至って,一躍イヨネスコやベケットと並ぶアンチ・テアトルの旗手として注目を浴びた。53年プランション演出の《タランヌ教授》を機に,彼の作風は不条理劇から社会性の強いものへと変わり,ブレヒトの理論に共鳴して《パオロ・パオリ》《71年春》など,次第に強烈な政治性を帯びていった。…

【前衛劇】より

…また,ドイツのB.ブレヒトの異化の手法を用いての問題発見とその解決を観客に迫る叙事演劇(のちには弁証法の演劇)も,その時代の,そして時代を超えた〈前衛精神〉の発露として多くの人々の共鳴するところとなっている。 さらに第2次世界大戦後には,1950年代のフランスを中心に現れた〈不条理absurdité〉または〈嘲弄dérision〉,さらには〈アンチ・テアトルanti‐théâtre(反演劇)〉,あるいはのちには単に〈ヌーボー・テアトルnouveau théâtre(新しい演劇)〉などと呼ばれた一群の演劇がある。いわば,その後60年代から70年代前半にかけての世界的規模での前衛劇運動の高まりの原動力となったものであり,また狭義にはこの一連の動きのみをいわゆる〈前衛劇〉と考える人も少なからずいるという点で,いずれにせよこれらの新しい演劇は,20世紀演劇における前衛精神を考える上では,とりわけ大きな意味をもつということができるだろう。…

※「アンチ・テアトル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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