アレルギー性接触皮膚炎(読み)アレルギーせいせっしょくひふえん(英語表記)Allergic contact dermatitis

六訂版 家庭医学大全科 「アレルギー性接触皮膚炎」の解説

アレルギー性接触皮膚炎
アレルギーせいせっしょくひふえん
Allergic contact dermatitis
(アレルギー疾患)

どんな病気か

 抗原になる物質皮膚接触することにより皮膚にアレルギー反応が起こり、かゆみを伴う紅斑丘疹(きゅうしん)などがみられます。接触後に皮膚に光が当たって初めて症状が現れるものを光接触(ひかりせっしょく)皮膚炎といいます。

原因は何か

 多くのものが原因になりますが、時計バンドやアクセサリー、バックルなどの金属製品、化粧品香水ウルシハゼプリムラなどの植物、毛染め、革製品、湿布薬や外用薬などによるものが多くみられます。

 遅延型(ちえんがた)アレルギー反応によるものであり、抗原になる物質に何度か接触しているうちに抗原に反応するT細胞が体内に作られ、症状が現れるようになります。

症状の現れ方

 はじめは原因物質が接触した部分に限って紅斑などの症状がみられますが、次第に拡大して周辺の皮膚にも広がります。接触した直後ではなく数時間後、時に1~2日たってから症状が現れ、数日間続きます。かゆみを伴う紅斑や丘疹のほか、症状が著しい場合にははれや水疱(すいほう)が現れ、治ったあとに色素の沈着を残します。

 光接触皮膚炎では原因物質が接触した部分で光が当たったところにだけ症状が現れます。湿布薬による光接触皮膚炎では、数週間前に貼った部分にも症状がみられることがあります。また、接触皮膚炎に伴って全身に小水疱や丘疹が散在して現れることがあります。これは自家感作性(じかかんさせい)皮膚炎といって接触皮膚炎が治っても持続することがあり、治るまでに長期間を要することがあります。

検査と診断

 原因として疑われる物質やその成分を検査用絆創膏で48時間皮膚に貼る検査(パッチテスト)を行います。光接触皮膚炎では絆創膏をはがしたあとで紫外線を照射します。検査部分が赤くなったら陽性とします。

治療の方法

 抗ヒスタミン薬の内服やステロイド軟膏の塗布を行います。ウルシや毛染めによる場合など、症状が著しい時にはステロイド薬の内服が必要になることがあります。

病気に気づいたらどうする

 接触を続けるうちに症状が激しくなることがあるので、原因物質に接触しないことが重要です。化粧品や外用薬など、使用開始時は無症状でも使い続けるうちに症状が現れたり、久しぶりに使用した時に初めて症状が出ることがあるので注意します。

相原 道子

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アレルギー性接触皮膚炎」の意味・わかりやすい解説

アレルギー性接触皮膚炎
アレルギーせいせっしょくひふえん
allergic contact dermatitis

表皮細胞への侵入者 (接触アレルゲン) を排出しようとして起こる皮膚のかゆみとブツブツで,湿疹 (しっしん) ともいわれる。接触アレルゲンとしては,せっけんシャンプー,化粧品,防カビ剤,ニッケル,コバルト,漆,農薬などさまざまなものがある。新しいものでは,ピアス型イヤリングをつけた人が起こす金属皮膚炎,頻繁にコピーをとる人が起こすコピー皮膚炎,自然食主義で自然化粧品を使った人が起こす植物基因性接触皮膚炎などがある。

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世界大百科事典(旧版)内のアレルギー性接触皮膚炎の言及

【主婦湿疹】より

…したがって,刺激原で起こるにせよ,アレルゲンで起こるにせよ,主婦の手指に湿疹や皮膚炎のできやすいことは容易に理解できる。 主婦湿疹の病型には2種類あり,以前から進行性指掌角皮症keratodermia tylodes palmaris progressiva(KTPPと略記)と称されてきた,刺激原による慢性的な乾燥性の皮膚炎と,急性湿疹や慢性湿疹の形をとるかゆみの強いアレルギー性接触皮膚炎allergic contact dermatitis (ACDと略記)がある。KTPPの主因は,おもに台所用洗剤や浴槽磨きなどに含まれる界面活性剤である。…

【神経皮膚炎】より

…皮膚病の一つ。アレルギー性接触皮膚炎が同一個所で反復して起こると,そこの表皮は肥厚し,真皮には浮腫や細胞浸潤が起こって,外見上皮膚は厚くなり,皮溝と皮丘がはっきりと強調されてみえる紅斑性局面をつくる。かゆみが強く,末梢神経が侵されているようにみえたためか,このような皮膚病をかつては神経皮膚炎といった。…

【皮膚炎】より

…症状も小水疱,糜爛(びらん),落屑(らくせつ),皮膚肥厚,皹裂(きれつ),色素沈着,痒疹,大水疱,潰瘍などさまざまである。 皮膚炎は大きく分けて,毒性のある化学物質が皮膚に触れて起こる刺激性接触皮膚炎irritant contact dermatitis(ICD)と,接触した化学物質に対する拒絶反応がTリンパ球によってもたらされ,抗原の付着した表皮細胞がキラーT細胞によって殺され,液化されて小水疱を形成するアレルギー性接触皮膚炎allergic contact dermatitis(ACD)の2種類がある。後者の変形として,アレルゲンが真皮内に存在してツベルクリン反応型の腫張,発赤を生ずるdermal dermatitisや,表皮基底層がT細胞の攻撃目標となって液化し,その中に含まれていたメラニンタンパク質が真皮上層にまき散らされて,治りにくい色素沈着を生ずる扁平苔癬(たいせん)~苔癬型反応のような反応型式もある。…

※「アレルギー性接触皮膚炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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