アルプ(読み)あるぷ(英語表記)Jean (Hans) Arp

精選版 日本国語大辞典 「アルプ」の意味・読み・例文・類語

アルプ

[1] 〘名〙 (alpe Alp) アルプス山地で森林がなくなるあたりから万年雪のある高地付近にかけてみられる草地のこと。アルプスの名称はこれに由来夏季谷間集落から追い上げられた乳牛、羊などの牧場として利用される。
[2] (Alpes) =アルプス(一)
花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉二四「或る時は旭日のアルプ山頂より昇るを喜び」

アルプ

(Hans Arp ハンス━) 彫刻家、画家。ドイツに生まれフランス帰化ダダイズム創始者の一人で、シュールレアリスム運動にも参加。極端に単純化したフォルム人間生命力を象徴する。(一八八七‐一九六六

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デジタル大辞泉 「アルプ」の意味・読み・例文・類語

アルプ(Hans Arp)

[1887~1966]ドイツからフランスに帰化した彫刻家・画家・詩人。簡潔な曲線を用いた有機体を思わせる具体美術(アールコンクレ)を作り出した。ジャン=アルプ。

アルプ(〈ドイツ〉Alp/〈フランス〉alpe)

アルプス山脈中腹の草原地帯。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルプ」の意味・わかりやすい解説

アルプ
あるぷ
Jean (Hans) Arp
(1887―1966)

フランスのストラスブールに生まれ、ドイツ、フランスで活躍した画家、彫刻家、詩人。初めはドイツ・ロマン派の影響下に詩作を試みるが、1905年以降ワイマール、パリの美術学校に学び、1912年「青騎士」に参加。1916年にチューリヒ・ダダの創設に加わり、1920年にはケルン・ダダを展開する。さらに1920年代なかばからはパリでシュルレアリスム運動に参加し、1931年に「抽象―創造」の設立に関与するなど、一連のアバンギャルド芸術運動において中心的な役割を果たした。絵画、コラージュ、彩色レリーフ、彫刻と多様な作品を手がけたが、その特質は生命の自然生成を基本とした柔らかな有機的形体にある。「芸術は、人間の内部で成長する果実である」という彼のことばは、いわゆる抽象的な形体を創造しながらも、自作をあくまでも「具体的」なものと考えていた彼の制作理念を物語っている。

[千葉成夫]

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百科事典マイペディア 「アルプ」の意味・わかりやすい解説

アルプ

仏名ジャン・アルプJean Arp。ドイツ,シュトラスブルクに生まれ,フランスで活動した画家,彫刻家。ワイマール,パリで美術を学ぶ。1912年〈ブラウエ・ライター〉第2回展に参加,1916年チューリヒでダダの結成に参加した。1926年パリに定住し,翌年シュルレアリスムに,また1930年にはアプストラクシヨン・クレアシヨンに参加。コラージュ,木彫の彩色レリーフから出発し,有機的なフォルムと結びついた生命と自然の単純化を理想とした。文業や詩も多く手がけている。
→関連項目エルンストユネスコ(UNESCO)

アルプ

アルプスの森林限界を越えた上に広がる草地。移牧の家畜の夏の放牧場となる。東部アルプスではアルムという。

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改訂新版 世界大百科事典 「アルプ」の意味・わかりやすい解説

アルプ
Hans Arp
生没年:1887-1966

ドイツに生まれ,フランスで活躍したダダおよびシュルレアリスムの代表的な画家,彫刻家。仏名ジャン・アルプJean Arp。シュトラスブルクに生まれ,生地とワイマール,パリで美術を学んだ後,詩作を始めた。1909年スイスへ行き,15年ゾフィー・トイバーと結婚,夫妻で実験的な立体構成やコラージュを試みる。16年チューリヒでダダの結成に参加し,20年からマックス・エルンストらとケルンでダダ運動を展開。27年シュルレアリスムに,31年〈抽象・創造〉グループに加わる。一貫して自然の元素的なかたちを単純化して表現した。作風は有機的な抽象だが,本人は〈具体芸術〉と呼ぶ。〈われわれは再生産するのではなく,果実を生みだす植物のように生産しよう〉という。文章や詩も多く,《わが道をゆく》(1948)や著述のすべてを集めた《葉をつまれた日々》(1966)などがある。バーゼルで没。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アルプ」の意味・わかりやすい解説

アルプ
Arp, Jean (Hans)

[生]1887.9.16. ストラスブール
[没]1966.6.7. バーゼル
フランスの画家,彫刻家。ワイマール,パリで学び,1912年ミュンヘンの「青騎士」展,13年ベルリンの「嵐」展に参加し,15~16年はスイスに滞在した。ダダの運動の推進者の一人。 19年 M.エルンストらとケルンでのダダ展に参加。 26年シュルレアリスム運動に加わる。第2次世界大戦後,ハーバード大学大学院の壁面浮彫 (1950) ,パリ,ユネスコ本部の浮彫 (58) その他の大作を制作。ダダ,シュルレアリスムの旗手の一人であり,また 1915年に最初の抽象画,17年には抽象の木彫浮彫を制作し,抽象美術の先駆者の一人とみなされる。コラージュ,切紙 papiers déchirésの技法の創案者で,詩集なども出版した。

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世界大百科事典(旧版)内のアルプの言及

【ウーリ[州]】より

…州都アルトドルフAltdorf。アルプス中央のザンクト・ゴットハルトSankt Gotthardt(サン・ゴタールSaint Gothard)峠の北側登口にあって,南ドイツと北イタリアを結ぶ交通の要路上にある。ウーリの歴史はこのアルプス越えの重要峠と不可分の関係をもつ。…

【オブジェ】より

…デュシャンは13年以後,量産の日用品を加工も変形もせず作品化する〈レディ・メード〉で,一品制作の手仕事による個性やオリジナリティの表現という,近代芸術の理念にアイロニカルな批判をつきつけ,ピカビアの〈無用な機械〉と名づけた立体や絵画も,機械のメカニズムをとおして人間や芸術を冷笑した。第1次大戦中におこったダダは,これらの実験を総合し,アルプやハウスマンの木片のレリーフ状オブジェや,シュウィッタースのがらくたを寄せ集めた〈メルツMerz〉,エルンストの額縁に入った金庫のようなレリーフ状作品などで知られる。ロシア,オランダの構成主義の,幾何学的構成物も見のがせない。…

※「アルプ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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