アルトマン(英語表記)Altman, Robert

百科事典マイペディア 「アルトマン」の意味・わかりやすい解説

アルトマン

米国の映画監督。ミズーリ州生れ。産業映画をへて劇場映画の監督となる。野戦病院を舞台にしたブラック・コメディ《M★A★S★H》(1970年)でカンヌ国際映画祭グランプリを受賞。主な作品に,雪深い鉱山町を舞台にした西部劇《ギャンブラー》(1971年),古典的ハードボイルド映画の定型を逸脱した《ロング・グッドバイ》(1973年,R.チャンドラー原作),狂気を孕んだ女性たちの心理劇《三人の女》(1977年),人気漫画の映画化《ポパイ》(1980年),S.シェパード原作・脚本の《フール・フォア・ラブ》(1985年),映画産業の裏側を暴いた《ザ・プレイヤー》(1992年)などがある。個性的な作風ゆえハリウッドでは異色の監督とされていたが,《ザ・プレイヤー》でカンヌ映画祭監督賞,《ショート・カッツ》(1993年)でベネチア映画祭金獅子賞,《ゴスフォード・パーク》(2001年)でゴールデン・グローブ監督賞を受賞。
→関連項目ウィリアムズローレン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アルトマン」の意味・わかりやすい解説

アルトマン
Altman, Robert

[生]1925.2.20. ミズーリ,カンザスシティー
[没]2006.11.20. カリフォルニア,ロサンゼルス
アメリカ合衆国の映画監督。1943~47年にアメリカ空軍パイロットとして従軍,その後ミズーリ大学で 3年間学んだのち,コマーシャルフィルムの監督となる。最初の 2本の長編映画は制作上のトラブルに加え興行的にも失敗だったが,朝鮮戦争題材にした反戦コメディ『M★A★S★H(マッシュ)』M*A*S*H(1970)で絶賛を浴びた。この映画で取り入れた,従来のストーリー展開を無視した構成,複数のせりふや音声を重ねる新しい手法はアルトマン独自のスタイルとなった。レーモンド・チャンドラー推理小説を現代風に脚色した『ロング・グッドバイ』The Long Goodbye(1973),カントリーミュージック業界を背景に繰り広げられる大統領選挙キャンペーンを描いた群像劇ナッシュビル』Nashville(1976)なども成功を収めたが,1980年代はヒット作に恵まれなかった。1990年代に入ると,ハリウッドを痛烈に皮肉ったブラックコメディ『ザ・プレイヤー』The Player(1992)が大ヒット。続く『ショート・カッツ』Short Cuts(1993)では現代アメリカ社会を悲観的視点からとらえ,アカデミー賞監督賞にノミネートされた。2005年アカデミー賞名誉賞を受賞。

アルトマン
Altman, Sidney

[生]1939.5.7. カナダケベックモントリオール
[没]2022.4.5. アメリカ合衆国,ニュージャージー,ロックリー
シドニー・アルトマン。カナダ生まれのアメリカ合衆国の分子生物学者。遺伝情報の伝達役と考えられていたリボ核酸 RNAの触媒機能に関する発見により,個別に同機能を発見したトーマス・R.チェックとともに 1989年ノーベル化学賞(→ノーベル賞)を受賞した。
1960年マサチューセッツ工科大学 MITで物理学の学士号を取得。コロンビア大学大学院で短期間物理学を学んだのち進路を変更,コロラド大学大学院で生物物理学を学び,1967年に博士号を取得した。ハーバード大学ケンブリッジ大学で 3年間の研究生活を送り,1971年エール大学で教職を得て,1980年生物学教授に就任。1983~85年学科長,1985~89年には同大学の学部教育を担うエール・カレッジのトップを務めた。1984年にカナダ国籍を保持したままアメリカ市民権を得た。RNAが酵素のような触媒機能をもつことを発見し,生命の起源の研究に有力な手がかりを与え,生物工学に新たな道を開いた。

アルトマン
Artmann, Hans Carl

[生]1921
オーストリアの詩人,劇作家。 1952年,前衛的な「ウィーン・グループ」を結成。ウィーン方言を用いた言語実験やパロディーによる,コンクレート・ポエジーを得意とした。詩集に『定型詩』 reime verse formeln (1954) ,『サセックスのフランケンシュタイン』 (69) ,『愛と悪徳についての詩』 (75) など。

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化学辞典 第2版 「アルトマン」の解説

アルトマン
アルトマン
Altman, Sydney

カナダ生まれのアメリカの分子生物学者.マサチューセッツ工科大学で物理学を学んだのち生物物理学に転じ,コロラド大学のL. Lermanのもとで学位を取得.ハーバード大学のM. Meselson,イギリス・ケンブリッジ大学医学研究会議分子生物学研究所のS. BrennerとF.H.C. Crick(クリック)のもとでの研究を経て,1971年イェール大学助教授に就任.1980年教授になり,1985~1989年には学長を務めた.大腸菌のチロシンtRNA前駆物質の5′末端を切断する酵素を分離し,リボヌクレアーゼPと名づけた.さらに,その酵素活性がRNAサブユニットであるM1RNAの触媒作用によることを明らかにした.それまでの酵素概念を覆すこの業績によって,1989年rRNAの触媒作用を発見したT. Cech(チェク)とともにノーベル化学賞を受賞.これらの研究は,生命の起源におけるRNAの重要性を示唆している.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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