日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
アルトマン(Sidney Altman)
あるとまん
Sidney Altman
(1939―2022)
アメリカの生物学者。カナダのモントリオールに生まれる。アメリカに渡り、マサチューセッツ工科大学(MIT)で物理学を学び、1960年卒業、コロンビア大学を経て、コロラド大学で専攻を分子生物学に変更し、1967年同大で博士号を取得した。その後、ハーバード大学、ケンブリッジ大学で研究を続け、1971年エール大学の生物学助教授につき、1980年教授に昇格した。1983年同大学学部主任、1985年エール・カレッジ(エール大学の学部課程)学部長となった。なお、1984年にアメリカの市民権を得ている。
大腸菌を用いて細胞内にあるリボ核酸(RNA)の一種、転移RNA(tRNA)前駆体を切断加工(スプライシング)するリボヌクレアーゼPの研究を行った。リボヌクレアーゼPはRNAとタンパク質からなるが、1978年にRNA部分のみが生体触媒として機能し、スプライシングをおこすことを発見した。1982年にT・R・チェックがまったく別の方法で、同様にRNA自体に生体触媒作用があることを発見したことを受けて、さらなる研究を進め、1983年にリボヌクレアーゼPのRNAが試験管内でtRNA前駆体を正しい位置でスプライシングすることを証明した。この業績によって、1989年にノーベル化学賞をチェックとともに受賞した。
[編集部 2018年6月19日]