改訂新版 世界大百科事典 「アリヅカコオロギ」の意味・わかりやすい解説
アリヅカコオロギ
Myrmecophila sapporensis
直翅目アリヅカコオロギ科の昆虫。アリの巣中で,アリと共生する微小なコオロギ。日本産コオロギ類中の最小種で,体長は2.5~3mm程度。ヤマアリ,ケアリなどの巣中に好んですみ,アリの体表をなめたりして生活している。成虫は濃い褐色をしており,体の全面に金色の微毛を密生させているので,見る方向によって金色に光って見える。腹面は白っぽい。幼虫は淡い褐色をしており,より小型。成虫,幼虫とも一年中見られる。体は楕円形で背側に強く膨らんでいる。トンネル状のアリの巣にしかすまないので飛ぶ必要がなく,この仲間は全部雌雄ともまったく翅を失っている。したがって鳴くこともない。またそのためコオロギ類の受音器官である前脚の耳(鼓膜器官)も欠いている。翅がないかわりに,すばしこく走り回る。そのため他のコオロギに比べ後脚の腿節(たいせつ)が著しく幅広くなっていて,その力強いことを示している。腹端から出る尾角は角状に突き出ていて,よく目だち,雌は腹端に短いが太い産卵管をもつので,雄との区別は容易である。
執筆者:山崎 柄根
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報