アラビアゴム(英語表記)gum arabic

翻訳|gum arabic

デジタル大辞泉 「アラビアゴム」の意味・読み・例文・類語

アラビア‐ゴム

gum arabicから》アラビアゴムノキの樹液。また、その乾燥したもの。糊・錠剤・乳化剤の製造に利用。

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精選版 日本国語大辞典 「アラビアゴム」の意味・読み・例文・類語

アラビア‐ゴム

〘名〙 (Arabishe gom から)
アフリカ産マメ科アカシア属植物の樹皮から得られる粘液状分泌物、およびそれを乾燥したもの。錠剤の結合剤、織物仕上げ、インク菓子粘着剤などに用いる。〔医語類聚(1872)〕
西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉一〇「札をかねてたくはへたるアラビヤゴムにて、堂のはしらへはりつけてゐるところへ」

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改訂新版 世界大百科事典 「アラビアゴム」の意味・わかりやすい解説

アラビアゴム
gum arabic

植物起源の代表的な親水性粘質物で,狭義には,北東アフリカに生えるアカシア属樹木の分泌物をいう。著名なものは,ナイル地方の常緑小高木アラビアゴムノキAcacia senegalよりとれる。樹皮の傷口から自然に流れ出たもののほか,雨季終了後に人為的に傷つけてとったものもある。分泌物はゴムという名ではあるが,弾性ゴムとは全く違うものからできている。弾性ゴムが石油同様,炭素と水素からなる炭化水素であるのに対し,アラビアゴムは酸素も含む多糖である。主成分はアラビンと呼ばれる多糖で80%を占め,残りの15%が水分,他は灰分などである。多糖はガラクトース29.5%,アルドビウロン酸28.3%,L-ラムノース14.2%などよりなる。多糖であるため水と混ざりやすく,かつ混ざったものは粘り気をもつ。したがって菓子の乳化剤などに広く使われている。また,切手の〈のり〉などに使われるのも,乾いてさらっとしていたものが唾液ですぐ粘り気をもつためである。そのほか医薬,紙,印刷用インキなど用途は広い。このように多糖を樹木が分泌する身近な例は,サクラ属Prunusにもある。商品化されている例には中近東のアストラガルス属Astragalusからのトラガントゴムがある。アラビアゴムの主生産地はアフリカのスーダンで,日本は使用する全量を外国から輸入している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アラビアゴム」の意味・わかりやすい解説

アラビアゴム
あらびあごむ
gum arabic

アフリカ産のマメ科(APG分類:マメ科)アカシア属の植物アラビアゴムノキ(学名Acacia senegal)、またはその同属や近縁の植物の幹に傷をつけて採取した樹液を日照で乾燥した天然樹脂のこと。アラビアガムともいわれ、かつてアラビア半島を経由して輸出されたのでこの名がある。無色ないし淡黄色のガラス状樹脂である。主成分はアラビン酸とよばれる複雑な多糖であり、L-アラビノース、D-ガラクトース、L-ラムノースおよびD-グルクロン酸からなる。通常、カルシウム、マグネシウムおよびカリウム塩として存在し、加水分解酵素および酸化酵素が含まれている。用途は、水彩絵の具の展色剤(バインダー)、医療用の粘滑剤、錠剤の結合剤、乳化剤、糊(のり)および接着剤、ガムシロップなどである。かつてその水溶液はアラビア糊とよばれて用いられた。現在市販されているアラビックヤマト糊は、ポリビニルアルコール水溶液が主成分である。

[福田和吉 2019年10月18日]

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化学辞典 第2版 「アラビアゴム」の解説

アラビアゴム
アラビアゴム
gum arabic

アフリカ産のマメ科Acacia senegal,またはその同属植物の枝幹から得た分泌物の乾燥品.往時,アラビアを経て輸出されたのでその名がある.無色ないし淡黄褐色の透明または多少乳濁した球状塊あるいは破片で,砕面はガラス状で光沢があり堅い.主成分はアラビン酸79~81% で,Ca,MgおよびK塩として存在する.アラビン酸はL-アラビノースD-ガラクトースL-ラムノースおよびD-グルクロン酸からなる.加水分解酵素および酸化酵素が含まれている.水溶性であり粘滑剤として胃腸カタルなどに対する医療用として用いられるほか,錠剤などの結合剤,乳化剤,あるいは糊料,接着剤などとしても用いられる.[CAS 9000-01-5]

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百科事典マイペディア 「アラビアゴム」の意味・わかりやすい解説

アラビアゴム

アカシア属の植物の分泌物が固化したもの。著名なものはアラビアゴムノキから採取したもの。産地はアフリカであるが,アラビアを経て地中海方面に輸出されていたのでこの名がある。現在,スーダンを主産地としオベイド,カッサラで取引され,ポート・スーダンから積み出されている。主成分はアラビン(C12H2(/0)O1(/0))(/n)で,無色もしくは微黄色の塊状物で水に可溶。医薬(錠剤等)の粘結剤,接着剤,糊料,捺染(なっせん)用,製紙用,顔料とあわせて水彩画絵具などに利用。
→関連項目ゴム接着剤

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アラビアゴム」の意味・わかりやすい解説

アラビアゴム
gum arabic

北アフリカ原産のマメ科アカシア属のアラビアゴムノキ Acacia senegalの樹液からとるゴム状樹脂。またこの樹脂を出す植物を単にこの名で呼ぶこともある。木は高さ 10m足らずの低木状で,2回羽状の複葉をつけ,葉のつけ根に鋭いとげをもつ。花は白色で,径 1cmほどの球状に密集してつく。樹脂の採取は 12月から4月頃にかけて行う。主要な栽培,生産はセネガルを中心にアフリカ西部で行われ,現在でも重要な輸出品となっている。成分となっている糖およびその誘導体は,アラビノース,ガラクトース,グルクロン酸など。こはく色ないし褐色の固形樹脂状のものとして産する。接着とか液体に粘りを与えるのに用いられ,インキや医薬の粘滑剤,乳化補助剤,糊,捺染染料の混合剤など具体的用途は広い。なお,同属の近縁種 A. laetaA. sieberianaA. seyalなどからも同様の樹脂がとれるが品質は劣るという。

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栄養・生化学辞典 「アラビアゴム」の解説

アラビアゴム

 アカシア属の樹液から得られる水溶性で低粘度の酸性ヘテログリカン.食品,化粧品,医薬品などの安定剤として用いられている.構成成分は,アラビノース,ガラクトース,グルクロン酸など.

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世界大百科事典(旧版)内のアラビアゴムの言及

【アカシア】より

… アカシア属でソウシジュのように高木になる種は,材木として植林され,その早い生長が注目されている。樹皮からタンニンが採取される種も多く,モリシマアカシア,アラビアゴムモドキA.arabica Willd.(アフリカ原産)や,薬用にする阿仙薬が採取されるアセンヤクノキA.catechu Willd.(インド原産)などが有名である。しかし,アカシア属の最も重要な産出物は,アラビアゴムと称される樹脂であろう。…

【ゴム】より

…(1)ガムgumといわれる無定形物質。この代表的なものがアラビアゴムgum arabicおよびトラガントゴムgum traganth(トラガカントゴムgum tragacanth)である。主成分は種々の多糖類がさまざまな割合で結合した高分子物質で,水に入れるとコロイド溶液となるか,著しく膨潤し粘りけを示す。…

※「アラビアゴム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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