アミアン大聖堂(読み)アミアンダイセイドウ(英語表記)Cathédrale de Notre-Dame, Amiens

デジタル大辞泉 「アミアン大聖堂」の意味・読み・例文・類語

アミアン‐だいせいどう〔‐ダイセイダウ〕【アミアン大聖堂】

Cathédrale Notre-Dame d'Amiensフランス北部ソンム県の都市、アミアンにある13世紀に建造された大聖堂。身廊の高さは42メートルあり同国で最も高い。シャルトル大聖堂ランス大聖堂に並ぶ同国屈指のゴシック式の聖堂として知られ、1981年、世界遺産文化遺産)に登録された。ノートルダム大聖堂

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改訂新版 世界大百科事典 「アミアン大聖堂」の意味・わかりやすい解説

アミアン大聖堂 (アミアンだいせいどう)
Cathédrale de Notre-Dame, Amiens

北フランスのアミアンにある大聖堂。盛期ゴシックの頂点に位置する建築で,規模はフランスのゴシック大聖堂中最大(全長145m,身廊高42.3m)。身廊,袖廊とも3廊式。大部分は1220-70年ころ建設。建築家としてロベール・ド・リュザルシュRobert de Luzarches,トマ・ド・コルモンThomas de Cormont,その子ルノーRenaud de Cormontの3人の名が残る。左右非対称の西正面双塔は,14世紀末(南側)と15世紀(北側)に完成。ゴシック大聖堂はしばしば〈石の聖書〉とたとえられるが,この大聖堂を飾る彫刻・浮彫群も,文字の読めない民衆に聖書物語を伝えるものであった。中央扉口のタンパン彫刻《最後の審判》下の中央柱には〈美しき神〉と呼ばれるキリスト像が置かれ,端正で均整のとれたこの像はゴシック彫刻の傑作とされる。ここでは,ロマネスク彫刻の超越的な神の姿は人間的で慈愛にあふれる姿に変わっており,自然主義的表現の台頭がみられる。向かって右扉口の中央柱には幼児キリストを抱いたマリア像が立ち,周囲の側壁,タンパンには受胎告知から戴冠にいたるマリアの生涯が表現されている。左扉口中央柱に彫られたフィルマンFirmin(最初のアミアン司教,のち聖人)の右手を挙げて民衆を祝福する像は,力と優しさに満ちたもの。左扉口最下部の腰石を飾る《12ヵ月の暦》(浮彫)には,黄道十二宮の象徴とともに,これに対応する毎月の労働が写実的に描かれ,当時の民衆の姿を伝える。袖廊南側扉口の〈黄金の聖母〉(当時は黄金色に彩色)は,首をかすかに傾けて幼児キリストに微笑を送り,腰をわずかにひねり,弾力的な動きを見せる。これは,13世紀中ごろのゴシック彫刻に現れるバロック的傾向を示すもの。内部は,アーケード明り窓を開けたトリフォリウムtriforium,高窓と3層構成をなし,高さ20mにも及ぶアーケードと天井の尖頭アーチとが上昇感をあおる。天井全体が四分リブ・ボールトで覆われ,それを支える束ね柱とともに,堂内空間に統一感を与えている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アミアン大聖堂」の意味・わかりやすい解説

アミアン大聖堂
あみあんだいせいどう
Cathédrale Notre-Dame d'Amiens

フランスのアミアンにあるノートル・ダム大聖堂。ゴシック教会建築を代表し、最大の規模を誇る。面積約7700平方メートル、容積約20万立方メートル、奥行145メートル、身廊の幅14.6メートル、高さ42.3メートル、側廊の幅8.65メートル。前時代のロマネスク様式の教会が1218年の火災で破損したのち、司教ド・フイヨワ時代の1220年にロベール・ド・リュザルシュの設計で再建が始められ、引き続き1288年までトマ・ド・コルモンと息子のルノーが監督にあたった。身廊、西正面とその扉口の彫刻は1236年に、内陣は1269年に、周歩廊と放射状礼拝堂は1247年に完成した。西正面南北の塔は14世紀後半から15世紀初頭に完成。西正面の三つの扉口および南翼廊の扉口には、13世紀の傑作とたたえられる『美しき神』をはじめとするみごとな彫刻群がある。なお、この聖堂は1981年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。

[名取四郎]


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世界遺産詳解 「アミアン大聖堂」の解説

アミアンだいせいどう【アミアン大聖堂】

1981年に登録された世界遺産(文化遺産)で、フランス北部ピカルディーにある。13世紀に最盛期を迎えた大聖堂の建設ラッシュはヨーロッパ各地に多くの建造物を生み出したが、そのなかでもゴシック様式聖堂の最高峰と称される。アミアン大司教の命により、建築家ロベール・ド・リュザルシュが工事に着工したのは1220年で、1288年には塔以外の主要部分がほぼ完成した。当時としては異例のスピードで完成をみたのは、徹底した分業と流れ作業によって各部材を量産することができたからである。大聖堂の規模は壮大で、奥行きが145m、身廊(しんろう)内の天井の高さは42.3m。聖堂の内外には数々の彫刻が飾られているが、まず目に入るのが聖堂西正面の扉口周辺を飾る彫刻群で、キリスト教の歴史や聖人伝などを表現していることから「石の百科全書」と呼ばれる。これらの彫刻群や建設工法はその後のゴシック建築に大きな影響を与えたことや、フランス最大の大聖堂であり、ゴシック彫刻の宝庫でもあることなどからその文化的価値が評価され、世界遺産に登録された。◇英名はAmiens Cathedral

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アミアン大聖堂」の意味・わかりやすい解説

アミアン大聖堂
アミアンだいせいどう
La Cathédrale Notre-Dame, Amiens

フランス,ソンム県の県都アミアンにある,ゴシック盛期の典型的な大聖堂。 1220年着工。身廊部は 1236年,ファサードは 1269年,アプスは 1270年,両翼部の礼拝堂は 1375年,北側の塔は 14世紀,南側の塔は 15世紀初めに竣工。尖塔は 1529年再建。建築家は,ロベール・ド・リュザルシュ,T.コルモンとその息子ルノー。 19世紀にビオレ=ル=デュクにより修復された。東西 145m,南北 70m。身廊部の高さ 42.3m。ファサード中央の門はキリスト,右はマリア,左はアミアン最初の司教聖フィルマンに捧げられ,それぞれこの期の彫刻の傑作がみられる。身廊部は,クリアストーリー,同じく外壁に窓をもつトリフォリウム,アーケードの3層構成をとり,垂直に向かう動きと水平方向の構成との調和が実現されている。 1981年世界遺産の文化遺産に登録。

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百科事典マイペディア 「アミアン大聖堂」の意味・わかりやすい解説

アミアン大聖堂【アミアンだいせいどう】

フランスのアミアンにある同国最大のゴシック聖堂建築。1220年から1270年にかけ,身廊部から着工,次いで内陣部が建造された。身廊は高さ42m,上昇感を強調する構成の美しさを誇り,3層の中層にも窓を設ける新採光法を採用。また双塔をもつ西正面扉口の彫刻群がすぐれる。1981年世界文化遺産に登録。
→関連項目ケルン大聖堂ゴシック美術ビオレ・ル・デュク

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「アミアン大聖堂」の解説

アミアン大聖堂(アミアンだいせいどう)
Amiens

北フランスの司教座都市アミアンにある大聖堂。その大半は1220~70年頃に建てられ,非対称の二つの塔は14~15世紀に完成した。ゴシック建築の代表例の一つで,フランスの大聖堂のなかでは最大の規模である。世界遺産に登録されている。

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旺文社世界史事典 三訂版 「アミアン大聖堂」の解説

アミアン大聖堂
アミアンだいせいどう
Amiens Cathedral

フランス北部のアミアン市にある代表的ゴシック建築
1220年外陣部から着工し,68年ごろ完成。ゴシックのパルテノンといわれる。

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世界大百科事典(旧版)内のアミアン大聖堂の言及

【ゴシック美術】より

…ついでフランス・ゴシック様式の正系を大規模に適用して,シュトラスブルク(身廊13世紀後半),ケルン(内陣部1248‐1322),プラハ(1344‐)の大聖堂が建設された。ケルン大聖堂は完成は19世紀であるが,アミアン大聖堂を範として,さらにゴシック建築法を極限までおし進めている。しかし14世紀以降,ドイツ・ゴシック様式は独自な発展をする。…

【ビオレ・ル・デュク】より

…フランスの修復建築家,建築史家,建築理論家。パリ生れ。エコール・デ・ボザール(国立美術学校)を忌避して独学で建築を学び,文化財保護技監であったP.メリメに認められてベズレーのラ・マドレーヌ教会の修理に当たった。ついで老練の建築家ラッシュスJean‐Baptiste Lassusとともに,1845年よりパリのノートル・ダム大聖堂の修復工事を担当してその地位を固めた。その後,文化財保護委員会委員,宗務省の建築技監として活躍し,シャルトル,ランス,アミアンなどの大聖堂やカルカソンヌ市の城壁,ピエールフォン城(ナポレオン3世の命による)などの修復に当たった。…

※「アミアン大聖堂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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