改訂新版 世界大百科事典 「アポロドロス」の意味・わかりやすい解説
アポロドロス
Apollodōros
前2世紀アテナイの学者。生没年不詳。アレクサンドリアで碩学サモトラケのアリスタルコスの下に学び,後ペルガモン,アテナイで学究活動を続けた。著述は多岐にわたるが,(1)トロイア戦争(前1184)から前144年までの歴史を編年体の詩文でつづった《年代記》,(2)合理主義的見地から古代ギリシア宗教を論じた《神論》,(3)古代の文学作品における地理歴史的言及についての批判研究,(4)エピカルモスならびにソフロンの作品注釈,(5)《古語注解》など。彼は《書架》と題する著作でギリシア神話の大成を遂げたとされるが,今日同名の題で伝わる《ギリシア神話》はローマ帝政期の編纂に成るもので,彼の作ではない。しかし古代の詩人・文人の作品を素材として,天地誕生から神々の系譜,英雄たちの事跡を包括的に記述した《ギリシア神話》は,伝存する最も詳細な散文要約であり,またその基本構成の一部はアポロドロス自身にまでさかのぼるものかもしれない。
執筆者:久保 正彰
アポロドロス(ダマスクスの)
Apollodōros
生没年:60ころ-130ころ
2世紀初めに活躍した,帝政ローマ時代の建築家。シリアのダマスクス出身といわれる。1世紀末ころドミティアヌス帝時代にローマに行き,トラヤヌス帝の首席建築家となる。ハドリアヌス帝の設計したビーナスとローマの神殿を酷評し,それがもとで130年追放され,やがて死罪となった。ルーマニアのドロベタ(現,トゥルヌ・セベリン)でドナウ川に架けた大橋(104-105),〈トラヤヌスのフォルムForum Trajani〉(107-113)とマーケットなどを手がける。また《ポリオルケティカPoliorketika》と題する建築書も著した(断片が伝わる)。きわめてヘレニズム的なフォルムや浴場など,当時としては斬新なコンクリート造の公共建築に,彼の多才ぶりがうかがえる。
執筆者:堀内 清治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報