精選版 日本国語大辞典 「アベスタ」の意味・読み・例文・類語
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ゾロアスター教の聖典。もとは21部からなったと伝えられるが、現在はその一部しか伝わらない。その言語は、紀元前1000年ごろにイラン北東部で使われていたと考えられるインド・イラン語の方言の一つで、この書以外には知られないので、アベスタ語とよばれる。長い間、口承で伝えられてきたが、ササン朝の6世紀ごろに、文字に書き記された。このとき採用された文字は、中世ペルシア語のアルファベットを変形させたもので、とくにこの言語を写すため使われた表音文字であった。
もっとも古い部分は、ゾロアスター自身のことばによるアフラ・マズダーへの賛歌で、「ガーサー」とよばれる。新しい部分は「後期アベスタ」と称され、言語的にはかなり崩れているが、そのなかにはガーサーと同程度に古いものが混入していることもある。
内容的には、ガーサーを中心とする祭祀(さいし)書「ヤスナ」、諸ヤザタ(神々)への祈祷(きとう)書である「ヤシュト」、儀式の細目を述べた除魔法「ベンディダード」、諸祈祷文を集めた「小アベスタ」に分けられる。ササン朝時代に、中世ペルシア語でアベスタの解釈が書かれ、「ザンド」とよばれた。このザンドを伴うアベスタが「ザンド・アベスタ」で、その全体でゾロアスター教の聖典といわれることもある。
[山本由美子]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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