日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
アブドゥル・ラフマーン(3世)
あぶどぅるらふまーん
‘Abd al-Ramān Ⅲ
(891―961)
後(こう)ウマイヤ朝第8代の君主(在位912~961)。その治世は半世紀に及ぶが、最初の数年間は国内の反乱の鎮圧と政治的再統一に努めた。一方、対外政策も積極的で、北方のレオンやナバラなどのキリスト教徒の地に遠征し、それらの諸王国を服属させた。また、チュニジアのファーティマ朝に対抗して、929年、後ウマイヤ朝で初めてカリフの称号を名のり、北アフリカに軍隊を派遣し、一時マグリブの西半分を支配下に収めた。産業、学問、文化を奨励して多くの学者を来住させた。また、大量に購入したサカーリバ(スラブ人やフランク人の奴隷)は兵士としてだけではなく、宮廷の側近や学者としても活躍した。治世中は隆盛を極め、首都コルドバは、衰退しつつあったバグダードにかわってイスラム世界でもっとも安定し繁栄した都市になった。
[私市正年]
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