アフマドアルバダウィー(英語表記)Aḥmad al-Badawī

改訂新版 世界大百科事典 「アフマドアルバダウィー」の意味・わかりやすい解説

アフマド・アルバダウィー
Aḥmad al-Badawī
生没年:1200ころ-76

エジプトにおける最も有力なイスラム神秘主義教団(タリーカ)であるアフマディー教団の創立者。預言者ムハンマドの血統を引く一族の出といわれている。モロッコのフェスで生まれ,幼少時にメッカに巡礼した。以後,イラク滞在を経て,エジプトのデルタ地帯の町タンターに移った。この地でスーフィーとしての活動を送り,1276年に没した。彼の後継者たちによって,アフマディー教団がつくられ,彼の命日を祝うマウリドと呼ばれる祝祭がタンターの町にある彼の墓廟で行われるようになった。後世,フランスのルイ9世の十字軍を撃退してエジプトを救うなどさまざまな英雄的功業をなした聖者として信じられるようになり,聖者崇拝の対象となった。エジプトの民衆の間では最も人気のある聖者であり,さまざまの願いごとをこの聖者に祈願したり,子どもの割礼の日をこの聖者の祝祭の日に定めることもある。
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世界大百科事典(旧版)内のアフマドアルバダウィーの言及

【アフマディー教団】より

アフマド・アルバダウィーを創立者とするイスラム神秘主義教団(タリーカ)。バダウィー教団と呼ばれることもある。…

【年中行事】より

…エジプトでは,同様に〈春風をかぐ祭りShamm al‐nasīm〉が行われるほか,秋のナイル川の増水を祝うワファー・アンニール(〈ナイルの洪水〉の意)が知られる。またマウリドも,農村では農繁期を避けて行われることが多く,下エジプトのタンターでは,アフマド・アルバダウィーのマウリドがエジプト古来の太陽暦(コプト暦)に従って行われ,この日はエジプト各地からさまざまな願いをもった参詣者が訪れて町はごったがえす。【三浦 徹】
[ヨーロッパ]
 ヨーロッパの年中行事には,クリスマス復活祭聖霊降臨祭のようなキリスト教会の年中行事と,民間信仰的年中行事との両者がある。…

※「アフマドアルバダウィー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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