アトピー性皮膚炎とフィラグリン

内科学 第10版 の解説

アトピー性皮膚炎とフィラグリン(アレルギー性疾患の遺伝子)

(2)アトピー性皮膚炎とフィラグリン
 尋常性魚鱗癬は全身性に皮膚が乾燥し,皮膚の最表層部が厚くなる常染色体優性遺伝を示す頻度の高い(300人に1人)比較的軽症魚鱗癬である.2006年にフィラグリン(filaggrin:FLG)の機能喪失型変異が尋常性魚鱗癬の原因として同定された.それに続き,2007年にアトピー性皮膚炎の一部でもFLG変異が高頻度(健常者の約3倍)に認められることが報告された.FLGは染色体1q21領域にクラスターとして存在する約60個の表皮分化に関与する遺伝子群の中の1つであり,皮膚の角質層の形成に重要な役割を果たす.表皮の顆粒層に存在するケラトヒアリン顆粒はおもにFLG前駆体であるプロフィラグリン(profilaggrin)からなり(図10-22-7),顆粒細胞の最終分化に伴い,プロフィラグリンはFLGの単量体へと分解される.FLGは角層構造を強固にし,またFLG分解産物は天然保湿因子として働く.日本人ではアトピー性皮膚炎の約1/4の症例でFLG変異をもつことが報告されている.アトピー性皮膚炎の罹患皮膚では変異の有無にかかわらずFLG発現は減少し,変異をもつ患者で特に発現量が低いこと,Th2サイトカインであるIL-4,IL-13がFLG発現を抑制することが報告されている.FLGのハプロ不全(haploinsufficiency:一対の相同染色体の一方の遺伝子の不活化で生じる表現型の変異,FLG蛋白の発現量が50%減少している状態)ではピーナツアレルギーのリスクが5.3倍,アトピー性皮膚炎のリスクが3.1倍,気管支喘息のリスクが1.5倍となることも報告され,上皮バリア機能不全と経皮感作との関連が示唆されている.[玉利真由美]
■文献
Irvine AD, et al: Filaggrin mutations associated with skin and allergic diseases. N Engl J Med, 365: 1315-1327, 2011.
Ober C, et al: The genetics of asthma and allergic disease: a 21st century perspective. Immunol Rev, 242: 10-30, 2011.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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