アッティラ(読み)あってぃら(英語表記)Attila

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アッティラ」の意味・わかりやすい解説

アッティラ
あってぃら
Attila
(406ころ―453)

フン人の王(在位434~453)。434年伯父ルア(ス)王の死後、最初は弟と共同で、のち単独で支配した。カスピ海からライン川に至る地域を征服、多くの民族を支配したが、中心拠点はハンガリー平原であった。しばしばビザンティン帝国を侵し、貢納を強要した。451年北ガリアに侵入、西ローマの将軍アエティウス指揮下の西ゴート、フランク、ブルグントなどの連合軍に敗れると、翌年イタリア各地を荒らし、教皇レオ1世の説得により引き揚げた。453年、新婚の妃(きさき)に殺害されたあと、彼のつくった大帝国は急速に瓦解(がかい)した。アッティラの恐怖は長くヨーロッパ人の記憶に残り、文学作品のなかにも伝えられた。たとえば『ニーベルンゲンの歌』のエッツェルがそれである。

[平城照介]

『P・クルセル著、尚樹啓太郎訳『文学にあらわれたゲルマン大侵入』(1974・東海大学出版会)』『L・アンビス著、安斎和雄訳『アッチラとフン族』(白水社・文庫クセジュ)』『H・シュライバー著、金森誠也訳『アッチラ王とフン族の秘密』(1977・佑学社)』

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旺文社世界史事典 三訂版 「アッティラ」の解説

アッティラ
Attila

406ごろ〜453
フン族の王(在位434〜453)
フン族を統合して王位につき,カスピ海からライン川に至る領域を支配し,東ローマ(ビザンツ)帝国を圧迫した。さらにガリアに侵入したが,西ゴートおよびアエティウスに率いられた西ローマの連合軍に,451年カタラウヌムの戦い敗北。翌年北イタリアに侵入し,ローマに迫ったが,教皇レオ1世の懇請を入れて撤退し,帰国途上急死,帝国も崩壊した。

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百科事典マイペディア 「アッティラ」の意味・わかりやすい解説

アッティラ

フン族の王。中欧から黒海に至る大帝国を建設し,ガリアに侵入したが,451年カタラウヌムの戦で敗退。翌年北イタリアに侵入したが,教皇レオ1世に説得されて撤退。後世の西洋人に〈神の鞭〉と恐れられ,その名は中世の伝説にしばしば現れている。
→関連項目アエティウス

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精選版 日本国語大辞典 「アッティラ」の意味・読み・例文・類語

アッティラ

(Attila)⸨アッチラ⸩ フン族の王(在四三四‐四四一)。現在のハンガリーを中心に一大帝国を築き、東西両ローマ帝国を圧迫。アッチラ大王。(四〇六頃━四五三

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デジタル大辞泉 「アッティラ」の意味・読み・例文・類語

アッティラ(Attila)

[406?~453]フン族の王。在位433~453。中部ヨーロッパに大帝国をつくり、西ローマ帝国をおびやかした。

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世界大百科事典 第2版 「アッティラ」の意味・わかりやすい解説

アッティラ【Attila】

?‐453
フン族の支配者。434年その兄弟ブレダとフン族の共同支配者となったが,445年ブレダを殺して独裁者となった。その版図は今日のハンガリーを根拠地に,東はカフカス,西はライン川,北はデンマーク,南はドン川右岸にまで広がった。447年アッティラの軍はトラキア地方をじゅうりんし,テルモピュライとコンスタンティノープル付近にまで迫った。この間70の都市・城塞を陥れた。このためビザンティン帝国は和平のためにアッティラに莫大な賠償金を約束した。

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世界大百科事典内のアッティラの言及

【ニーベルンゲンの歌】より

…そしてジークフリートがかつてニーベルンゲン族から奪った宝はラインの底に沈められる。その後クリームヒルトはフン族のアッティラ王と再婚し,彼女は招きに応じてやって来たハーゲンに復讐を企てる。戦いの結果,フン族もブルグント族も死に絶える。…

【フン族】より

…いわゆるゲルマン人の民族大移動の一因は,このフン族西進の圧力であるとされる。 その後フン族はハンガリー平原を制圧,ここを根拠に東・西ローマ領内に侵入を繰り返していたが,445年,アッティラがフン族全体に支配権を確立した結果,黒海からライン河畔に広がるフン帝国が出現した。彼はさらにガリア征服を企てたが,西ローマの将軍アエティウスは,フランク族,ブルグンド族,西ゴート族の援助をうけて,451年,侵入したフン族をカタラウヌムの戦で撃退した。…

※「アッティラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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