精選版 日本国語大辞典 「アダン」の意味・読み・例文・類語
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熱帯の海岸に広く分布する木本性タコノキ科の植物。アダンの名は琉球の現地名にもとづく。木質の茎を有し,その基部近くからは,太く,分枝をしない気根を多数生じ,上部は二叉(にさ)状に多数の分枝を出す。茎の上部には長い線形の葉を3列のらせん状に密生する。葉は長さ0.9~1.5m,幅5~10cm,葉縁には鋸歯がある。雌雄異株で,雄株は,葉腋(ようえき)から黄白色の苞葉に包まれ,分枝した数個の棒状の肉穂花序を出す。雄花は多数が密生し,芳香を有する。雌株は,多数の雌花が集合した球形の花序を有し,雌花には花被片もおしべも退化してない。果実体は楕円形で,赤熟し,やがてばらばらに1個ずつの果実に分離する。この果実は海水に浮き,広く海流によって分散する。太平洋およびインド洋地域の熱帯から亜熱帯に広く分布し,日本では南西諸島の海岸に普通にみられる。葉は敷物や籠の材料に広く利用されている。果実は成熟するとパイナップル様の芳香を発し,基部の多汁質の部分には甘味があって食用になる。またその特徴的な樹形や葉のため,観賞用に温室で栽植されることも多い。
小笠原諸島に特産するタコノキP.boninensis Weberはより大型で分枝が少なく,観賞用に温室で栽植されることがある。また,葉はアダンと同様に利用される。このタコノキの仲間は,熱帯に類似した種が多数ある。
木本性の単子葉植物。同じ木本性であるヤシ科とは,茎が通常分枝すること,葉は線形で,葉柄と葉身の分化はしていないことで,簡単に見分けがつけられる。花は退化的で,雌雄異花。多数が密集して花軸上につき,それを苞葉が包む。苞葉はしばしば白や赤色で,目だつことが多い。花序の形態から,サトイモ科やヤシ科に類縁があるとされるが,確実ではない。分布は熱帯圏に限られ,3属400種ほどが知られている。線形の葉は縦に裂けやすく,各種の敷物,籠,帽子を編むのに,広くいろいろな種が利用されるし,ツルアダンの仲間のしなやかな茎も同様の用途に使用される。種子の胚乳はデンプン質のため食用になり,マレーシアのニコバル島ではタコノキの1種P.andamanensis Kurz.が主食として利用されている。また果実が食用にされ,観賞用にも広く栽植されている。
執筆者:堀田 満
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「タコノキ(蛸の木)」のページをご覧ください。
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