アダックス(英語表記)addax
Addax nasomaculatus

改訂新版 世界大百科事典 「アダックス」の意味・わかりやすい解説

アダックス
addax
Addax nasomaculatus

長大なねじれた角をもつ偶蹄目ウシ科の哺乳類。サハラ砂漠南部にすむ。肩高95~115cm,体長1.5~1.7m,体重60~125kg。角は雌で55~80cm,雄では60~110cm,2~3回コルク栓抜き状にねじれながら上外方に向かい,先端部1/3を除き多数の顕著な節がある。体は灰褐色,四肢,腹,尾は白く,頭頂に黒褐色の毛冠がある。砂漠,半砂漠地帯に2~20頭の群れですみ,夕方から夜半までと早朝に活動し草や低木の葉を食べる。1ヵ月以上水を飲まずに過ごすことができる。雨季には雨を追って南から北,さらに北から南へ移動,移動時には数百の大群をなす。妊娠期間257~264日,おもに1~4月と9~10月に1子を生む。寿命は19年前後。古代エジプトではふつうに飼われ,今から150年前まではサハラリビアの全域に分布,分布周辺地域ではライオン,ヒョウ,チーター,リカオンなど多くの天敵があったが,今ではモーリタニアマリ,ニジェール,チャドの一部にすむのみで天敵もない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アダックス」の意味・わかりやすい解説

アダックス
あだっくす
addax
[学] Addax nasomaculatus

哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目ウシ科の動物。アフリカのリオデオロ(西サハラ)、セネガルからエジプト、スーダンまでのサハラ砂漠に分布する。肩高1.0~1.1メートル、体重80~120キログラム。角(つの)は雌雄にあり、長さは約90センチメートル、ときに1.1メートルに達する。体背面は夏は淡い砂色、冬は灰茶色で、腹面や四肢などは白い。顔は黒く、前面にX字形の白斑(はくはん)がある。ひづめ黒色で幅広く、砂地での行動を助ける。普通5~20頭の小群で生活し、年をとった雄がリーダーとなる。砂漠に生える植物を食べ、水分もそれからとるため、ほとんど水を飲まずに生きることができる。雨のあとで急速に茂る植物を求めて、長距離の移動を行うが、本種にはこれらの植物を遠くから捜し出す能力があるといわれる。冬または早春に1子を産む。体が頑丈で、長距離を歩くのに適するが、走るのは遅いため、ラクダやウマを利用する原住民に狩られ、肉は食用に、皮は靴用にされた。生息数が7000~8000頭と激減、現在では分布域にあたる国々では法律により保護している。

[今泉忠明]


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世界大百科事典(旧版)内のアダックスの言及

【レイヨウ(羚羊)】より

…体は白色や淡黄褐色などで,鼻づらや目のあたりに黒色または褐色の斑紋がある。アフリカからアラビアの乾燥地帯に分布し,絶滅が心配されているアラビアオリックスOryx leucoryxなどのオリックス属,古代エジプト人によって半家畜として飼育されたことのあるアダックスAddax nasomaculatus,もっともみごとなレイヨウといわれるセーブルアンテロープHippotragus nigerなど3属7種がある。(4)リードバック亜科Reduncinae 中型ないし大型で,角は雌になく,尾は中位の長さで先端の房毛はふつうない。…

【レイヨウ(羚羊)】より

…体は白色や淡黄褐色などで,鼻づらや目のあたりに黒色または褐色の斑紋がある。アフリカからアラビアの乾燥地帯に分布し,絶滅が心配されているアラビアオリックスOryx leucoryxなどのオリックス属,古代エジプト人によって半家畜として飼育されたことのあるアダックスAddax nasomaculatus,もっともみごとなレイヨウといわれるセーブルアンテロープHippotragus nigerなど3属7種がある。(4)リードバック亜科Reduncinae 中型ないし大型で,角は雌になく,尾は中位の長さで先端の房毛はふつうない。…

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