アゾフ(英語表記)Azov

翻訳|Azov

改訂新版 世界大百科事典 「アゾフ」の意味・わかりやすい解説

アゾフ
Azov

ロシア連邦,ヨーロッパ・ロシア南西部,ロストフ州の都市。人口8万0900(1992)。アゾフ海タガンログ湾に注ぐドン河口から7km上流左岸に位置する。6世紀,ビザンティンの植民地となり,10~11世紀にキエフ・ロシアのトムタラカン公国に編入された。1067年ごろトルコ系のポロベツ人に奪取され,彼らがアズフ(アザク)・ハーンの名称をつけた。その後,トルコ,ドン・コサックが占拠したが,1696年にピョートル1世の軍隊が入り,町造りをした。その後も,トルコとロシアの争奪地点となったが,1774年最終的にロシアに編入され,アゾフ県の県都,軍事要塞として発展。しかし19世紀にロストフ・ナ・ドヌーに戦略的経済的地位を奪われ,衰退した。1942年7月~43年2月,ドイツ軍に占領されて大きく破壊された。現在は冶金造船,軽工業,魚介加工,建築資材などの工場がある。アゾフ要塞の門などの遺跡が残っている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アゾフ」の意味・わかりやすい解説

アゾフ
Azov

ロシア南西部,ロストフ州の都市。アゾフ海に注ぐドン川の河口から約 10km上流の沿岸に位置する。古代ギリシアの植民市タナイスのあった地で,15世紀以来トルコ領に入っていたが,1696年ピョートル1世が占領,1708年に町を建設。その後一時トルコに占領され,39年最終的にロシア領となり,港湾都市として発展。港湾機能は上流のロストフナドヌーに譲っているが,機械 (鍛造,プレス) ,造船,水産加工,繊維 (長靴下,縫製) ,建設資材などの工業が発達。ロストフナドヌーとアゼルバイジャンの首都バクーを結ぶ幹線鉄道から分岐する支線の終点。人口8万 700 (1991推計) 。

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世界大百科事典(旧版)内のアゾフの言及

【ドン[川]】より

…ロシア連邦西部,中央ロシア丘陵にはじまり,南流してアゾフ海にそそぐ川。長さ1870km,流域面積42万2000km2。…

【露土戦争】より

…(4)19世紀後半 ロシアによるオスマン帝国への進出に対してイギリス,フランスなどの西欧列強が干渉し,トルコの植民地化が決定的となった。(1)18世紀前半まで ピョートル1世の改革によってロシア帝国は発展し,まずバルト海に進出し,南方においても,黒海への出口にあたるアゾフの領有をめぐって,黒海北岸の支配権を握るオスマン帝国と対立した。1699年カルロビツ条約で,ロシアは一時アゾフを獲得したが,北方戦争に敗れたスウェーデン王のオスマン帝国への亡命問題に端を発したプルート戦争(1710‐11)で,ロシア軍はオスマン帝国軍に包囲され,ピョートル1世は危うく捕虜となることをまぬがれるなど敗北を喫し,オスマン帝国はアゾフを奪回した。…

※「アゾフ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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