アスパラギン(読み)あすぱらぎん(英語表記)asparagine

翻訳|asparagine

デジタル大辞泉 「アスパラギン」の意味・読み・例文・類語

アスパラギン(asparagine)

アミノ酸の一。最初アスパラガスから発見された。植物界に広く存在し、特に発芽したマメ類ジャガイモには遊離した形で多量に存在する。加水分解によりアスパラギン酸を生じる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アスパラギン」の意味・わかりやすい解説

アスパラギン
あすぱらぎん
asparagine

α(アルファ)-アミノ酸の一つで、アスパラギン酸のβ(ベータ)-アミド略号AsnまたはN。人間にとっては非必須(ひひっす)アミノ酸。ロビケらがアスパラガスから発見、命名した。遊離した状態ではL-アスパラギンがD-アスパラギンよりも広く存在し、1水塩として存在する。シロバナルピナスの豆やダイズカラスノエンドウの芽などに存在する。L-アスパラギンはタンパク質の構成成分としても存在する。アスパラギンとN-アセチル-D-グルコサミンの間のN-グリコシド結合は、糖鎖(グルコースガラクトースなどの糖が鎖状に連なった物質)がタンパク質に結合する一つの様式である(グルコサミンは、グルコースのヒドロキシ基の一つがアミノ基に置換したもので、甲殻類の殻(から)のキチンなどに存在する)。生体内では、アスパラギン酸、アンモニアATP(アデノシン三リン酸)より、アスパラギンシンテターゼ(アスパラギン合成酵素)の触媒で生成される。分子量132.12。分解点236℃。酸、アルカリに溶けやすく、水にも溶け、アルコールには溶けない。

[降旗千恵]

『三浦謹一郎編『プロテインエンジニアリング』(1990・東京化学同人)』『森正敬著『生体の窒素の旅』(1991・共立出版)』『マックス・ペルツ著、林利彦・今村保忠訳『生命の第二の秘密――タンパク質の協同現象とアロステリック制御の分子機構』(1991・マグロウヒル出版)』『Fred Brouns著、樋口満監訳『スポーツ栄養の科学的基礎』(1997・杏林書院)』『近藤和雄・渡邉早苗著『専門医がやさしく教える注目の栄養素――健康づくりに欠かせない40の栄養成分と症状別摂取法』(1998・PHP研究所)』『松尾収二監修、前川芳明編『臨床検査ディクショナリー』(1998・メディカ出版)』

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化学辞典 第2版 「アスパラギン」の解説

アスパラギン
アスパラギン
asparagine

2-aminosuccinamic acid.C4H8N2O3(132.12).H2NCOCH2CH(NH2)COOH.略号AsnまたはN.アスパラガスからはじめて見いだされたが,L-アスパラギンはマメ類やテンサイに多く含まれ,タンパク質の構成成分としても広く分布している.豆モヤシの温水抽出液から一水和物が得られる.一水和物は斜方晶系融点234~235 ℃.-5.42°(水).pKa1 2.02,pKa2 8.80.水に易溶,エタノールに難溶.苦味がある.生体中で過剰窒素を貯蔵する役割がある.必須アミノ酸ではない.D,L-アスパラギンは無水マレイン酸アンモニア水と加熱して合成する.[CAS 70-47-3]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アスパラギン」の意味・わかりやすい解説

アスパラギン
asparagine

アミノ酸一種アスパラギン酸アミド。化学式 NH2COCH2CH(NH2)COOH,略号は Asn。天然の L-アスパラギンは無色斜方晶,融点 234~235℃。水に可溶アスパラガス中に発見され,野菜,豆類などに広く分布し,不快味を呈する。D体は天然には存在せず,甘味を呈する。無水マレイン酸アンモニアを熱すると DL混合体ができる。

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漢方薬・生薬・栄養成分がわかる事典 「アスパラギン」の解説

アスパラギン【asparagine】

アミノ酸の一種で、非必須アミノ酸。植物界に広く存在し、特に発芽した豆類やてんさい、じゃがいもに多く含まれる。加水分解によってアスパラギン酸を生じ、アスパラギン酸の誘導体として活躍するほか、肝保護作用、運動持久力の向上作用、新陳代謝の向上、スタミナ増強作用などの作用をもつ。◇アスパラガスからはじめて単離されたことによる命名。

出典 講談社漢方薬・生薬・栄養成分がわかる事典について 情報

栄養・生化学辞典 「アスパラギン」の解説

アスパラギン

 C4H8N2O3 (mw132.12).

 アスパラギン酸のβ位のカルボキシル基が酸アミドとなったアミノ酸.可欠アミノ酸.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「アスパラギン」の意味・わかりやすい解説

アスパラギン
asparagine

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