アジ化鉛(読み)アジかなまり(英語表記)lead azide

改訂新版 世界大百科事典 「アジ化鉛」の意味・わかりやすい解説

アジ化鉛 (アジかなまり)
lead azide

化学式Pb(N32酢酸鉛(Ⅱ) Pb(CH3COO)2アジ化ナトリウムNaN3水溶液を混合すると,水に難溶性の無色の針状または粉末状の結晶として生成する。結晶には安定なα形(斜方晶系比重4.71)と不安定なβ形(単斜晶系,比重4.93)の2形がある。熱水にはわずかに溶けるが徐々に分解してアンモニアを発生する。希硝酸酢酸には溶ける。きわめて爆発性が強く,330℃程度に加熱するか,結晶を破砕したり摩擦するだけで水中でも爆発することがある。工業用にはデキストリンゼラチンを加えた水溶液から沈殿させて結晶の発達を妨げ,やや鈍感なものとする。雷管信管などの起爆薬に用いるが,結晶状のものは鋭敏すぎるため,日本では産業用雷管の起爆薬としては用いられず,代わってジアゾジニトロフェノールDDNP)が用いられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アジ化鉛」の意味・わかりやすい解説

アジ化鉛
あじかなまり
lead azide

アジ化水素酸の鉛塩。鉛アジドともいう。窒化鉛は誤称。化学式Pb(N3)2 式量291.26。アジ化ナトリウムの希水溶液をかき混ぜながら、これに酢酸鉛(Ⅱ)の希水溶液を加えると、針状晶として沈殿する。結晶は水中でも爆発しやすいので、工業的にはアジ化ナトリウム水溶液に約2%のゼラチンかデキストリンを加え、結晶の成長を防いで無定形粒状物として製造する。純粋なものは無色の結晶で、斜方晶系の安定型(α(アルファ)型)と、単斜晶系の不安定型(β(ベータ)型)が知られる(α型の比重4.71、β型の比重4.93)。冷水やエタノールエチルアルコール)にはほとんど溶けないが、酢酸鉛(Ⅱ)の水溶液や希硝酸に溶ける。沸騰水にわずかに溶けるが、アンモニアを発して分解し非爆発性の物質となる。発火点は330℃で、点火またはわずかの衝撃、摩擦によって瞬間的に爆発する。起爆薬として軍事用の雷管、信管に用いられるが、結晶状のものはあまりに鋭敏であるなど欠点もある。酢酸アンモニウム水溶液に溶かし、二クロム酸ナトリウムを加えるか、亜硝酸ナトリウム水溶液中で硝酸を作用させて分解することができる。有毒。皮膚炎をおこす。

[守永健一・中原勝儼]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アジ化鉛」の意味・わかりやすい解説

アジ化鉛
アジかなまり
lead azide

爆発性化合物。化学式は Pb(N3)2 。酢酸鉛 (II) 水溶液とアジ化ナトリウム水溶液から得られる無色針状または白色結晶。α型 (斜方晶系,比重 4.71) とβ型 (単斜晶系,比重 4.93) との2種があり,β型は不安定で,爆発しやすく,加熱 (約 300℃) または破砕,摩擦などによっても瞬時に爆発する。冷水,アンモニア水,アルコールなどに不溶。熱水にわずかに溶け,徐々に分解しアンモニアを発生。酢酸,希硝酸に易溶。起爆薬として信管,雷管などに使用する。

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百科事典マイペディア 「アジ化鉛」の意味・わかりやすい解説

アジ化鉛【アジかなまり】

化学式はPb(N32。アジ化ナトリウムおよび酢酸鉛の希薄水溶液を混ぜ合わせて作られる無色の結晶。きわめてわずかの衝撃,摩擦,熱などによって瞬間的に爆発を起こす。起爆薬として雷管,信管などに用いられる。
→関連項目アジド起爆薬

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