アシュビン双神(読み)アシュビンそうしん(英語表記)Aśvin

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アシュビン双神」の意味・わかりやすい解説

アシュビン双神
アシュビンそうしん
Aśvin

インドの『リグ・ベーダ』の神。たいていの場合,一対の神格としてあげられている。双神は若く美しさに満ち敏速,聡明で驚くべき威力をもつ。蜜を特に好み,多量の蜜を馬のひづめから注ぐといわれる。双神の乗る車は蜜色で,蜜を運び,鳥または有翼の馬に引かれている。彼らはビバスバットとサラニウーの双生児とされ,太陽の娘スーリヤと親密である。彼らは人々を厄から救い,すぐれた医術をふるう。彼らは早朝に出現する。アシュビンという名称は騎士を意味するが,起源は不明である。『リグ・ベーダ』において双神に捧げられる賛歌は 50編以上で,数としては,インドラ,アグニ,ソーマに次ぐ。前 14世紀のミタンニ・ヒッタイト条約文では,ナーサティの名のもとに,ミトラ,バルナ,インドラに比較して重視しているが,アベスタにおいてはこれに相当するナーハイスヤは悪魔の列に落ちた。ギリシア神話ではディオスクロイに対応する。

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世界大百科事典(旧版)内のアシュビン双神の言及

【インド神話】より

…インドの思想・文化を理解するためには,インド神話の知識が不可欠である。また近年,比較神話学の分野において,インド神話は重要な位置を占めている。インド神話は,一般にベーダの神話と,叙事詩・プラーナ聖典の神話に大別される。
【《リグ・ベーダ》の神話】
 前1500年から前900年ごろに作られた,最古のベーダ文献である《リグ・ベーダ本集》には,一貫した筋の神話は見いだされないが,事実上の作者である聖仙(リシ,カビ)たちは,当時のインド・アーリヤ人が持っていたなんらかの神話を前提として詩作したと思われる。…

※「アシュビン双神」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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