アシュケナジム(英語表記)Ashkenazim

デジタル大辞泉 「アシュケナジム」の意味・読み・例文・類語

アシュケナジム(Ashkenazim)

ヨーロッパ中部・東部に定住したユダヤ人、また、その子孫総称イディッシュ語を使用。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「アシュケナジム」の意味・わかりやすい解説

アシュケナジム
Ashkenazim

離散のユダヤ人のうち,最初はライン地方のユダヤ人を意味したが,のちドイツ系ユダヤ人とその子孫(他国に移住した者も),および彼らの伝統・文化の総体を意味するようになった。単婚家族を構成しイディッシュYiddish語を使用。アシュケナジムは,セファルディムとともに中世以後のユダヤ人世界を二分した。この二分は,今日のイスラエルで首席ラビ職が2人おかれていることに象徴される。その宗教態度は根本主義的・厳格主義的傾向を示し,殉教の聖なる伝統を保持した。15,16世紀に西欧から東欧への移住にともない,その中心地もボヘミアモラビアポーランドリトアニアへ移った。17世紀以後,東欧でのポグロム虐殺迫害)の結果,移住者が西欧全域に拡散し,アシュケナジムは,ヨーロッパ,オーストラリア,南アフリカ,アメリカ合衆国でセファルディムよりも優勢であった。第2次大戦前には,全世界のユダヤ人口1650万の90%はアシュケナジムであった。ナチスホロコーストはこの比率を大きく低下させた。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「アシュケナジム」の意味・わかりやすい解説

アシュケナジム

本来はドイツに居住したイディッシュ語を話すユダヤ人をさす。のちに中・東欧出身のユダヤ人を含めるようになった。シオニズム運動の推進役を務め,多くイスラエル移民同国では一般に教育文化水準が高く,現在も指導的役割をになっている。→ユダヤ人セファルディム
→関連項目ミズラヒム

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のアシュケナジムの言及

【イスラエル[国]】より

… イスラエル政府の統計年報によれば,1996年末で総人口は576万人で,うちユダヤ人が81%,非ユダヤ人が19%となっている(イスラエルでは今なお〈ユダヤ人〉とは何か,という論争が続いており,その決着はついていないが,イスラエル国内に定住するユダヤ教徒はすべてユダヤ人とされ,イスラエル国籍を与えられる)。イスラエルに住むユダヤ人は,セファルディムと呼ばれるアジア・アフリカ系のユダヤ人と,アシュケナジムと呼ばれる欧米系のユダヤ人とに大別される。両者の数はほぼ拮抗しているが,社会的・経済的には大きな格差があり,エリート層の多くはアシュケナジムによって占められている。…

【イディッシュ語】より

…9世紀ころ,北イタリアや北フランスからドイツに移住し,13世紀以後キリスト教徒の迫害を逃れてさらに東欧に移ったユダヤ人(いわゆるアシュケナジム)の間で形成され,ヘブライ語とともに全世界のユダヤ人に最も普及した言語。別名ユダヤ人ドイツ語,ユダヤ語。…

【シオニズム】より

…これと並んで,19世紀末以来すすめられてきたキブツによる集団入植が,独自の理念と文化を築き,シオニズム運動の重要な要因となった。 1948年イスラエル国家の成立により,シオニズムの目標は達成されたが,宗教原理に基づくこの国家の基本的性格をめぐる議論,国内でのヨーロッパ系市民(アシュケナジム)の支配による事実上の人種差別の問題,パレスティナ問題,アラブ・ナショナリズムとの対立の問題,国際共産主義運動とシオニズムとの関係等,その直面する状況はなお複雑である。シオニズムは,ヨーロッパにおけるユダヤ人問題を,これを輸出することによって解決しようとしたが,かえってこの問題を全世界的規模にまで拡大したとみることができるであろう。…

【ユダヤ音楽】より

…次いでこの賛歌のための専門の詩人兼歌手の合唱長(ハザン)が誕生し,彼らはその後,もちまえの美声による即興的な名人芸風の歌い方で会衆を魅了した。離散時代のユダヤ人は,地域により大きく分かれ,スペイン・地中海系はセファルディムと呼ばれ,中央・東ヨーロッパ系(近代にはアメリカにも移住)のユダヤ人はアシュケナジムと呼ばれる。彼らは,共同体周辺との交流の結果,その音楽様式をもそれぞれに変容させていった。…

【ユダヤ教】より

…一時,大勢力になったが,結局,余りにも厳格な律法主義に陥り,広く民衆の支持をえることができなかったため急速に衰退した。 ユダヤ人世界には,11世紀までに,スペインを中心とするイスラム教圏のスファラド系(セファルディム)と,ヨーロッパ・キリスト教圏のアシュケナーズ系(アシュケナジム)の二つの大きな文化的伝統が確立した。10世紀以降,アシュケナーズ系ユダヤ学がライン川流域地方で盛んになり,西ヨーロッパ全域に大きな影響を及ぼした。…

【ユダヤ人】より

…彼らは19世紀後半に帝政ロシアの迫害と貧困を逃れるため大量に西ヨーロッパ諸国,さらにはアメリカへと移住した。アシュケナジムと呼ばれるこれらのユダヤ教徒は,セファルディムと称され,西ヨーロッパ社会に同化しつつあったユダヤ教徒たちからも蔑視され差別された。彼ら自身やがては西ヨーロッパ社会に同化していくのであるが,その存在は近代ヨーロッパで新たにユダヤ人観が形成されていくとき,これに重大な影響を与えた。…

※「アシュケナジム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android