アキノタムラソウ(英語表記)Salvia japonica Thunb.

改訂新版 世界大百科事典 「アキノタムラソウ」の意味・わかりやすい解説

アキノタムラソウ
Salvia japonica Thunb.

山野道端や林縁に普通に見られるシソ科多年草。茎は四角形で,短く横たわった地下茎から直立し,高さ20~80cm。葉は葉柄があって2枚ずつ対生し,普通,羽状複葉であるが,2回羽状になったり,また分裂しないものがあったり,個体によってさまざまな形をとる。7~11月ごろ,茎の先に細長い花穂を作って,淡紫色で長さ1cmあまりの唇形をした花を多数つける。北海道を除く日本全土と中国に分布する。ナツノタムラソウS.lutescens Koidz.var.intermedia (Makino) Murataは花が濃紫色で6~8月に開き,関東南部,東海,近畿地方に分布する。ウスギナツノタムラソウvar.lutescensは花が淡黄色で鈴鹿地方に,ミヤマタムラソウvar.crenata (Makino) Murataは花が淡紫色で中部地方以北の山地に分布する。ハルノタムラソウS.ranzaniana Makinoは小型で春に白い花をつけ,紀伊半島四国,九州の谷間に分布する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アキノタムラソウ」の意味・わかりやすい解説

アキノタムラソウ
あきのたむらそう / 秋田村草
[学] Salvia japonica Thunb.

シソ科(APG分類:シソ科)の多年草で、山野の道端に生える。茎は方形で高さ30~80センチメートル、上部で分枝する。葉は対生して葉柄があり単葉から3出2回羽状複葉まで変化が多い。7~10月、枝先に長い花穂をつくり、淡紫色の花を数個ずつ何段にもつけ下のほうから開く。萼(がく)は筒状で2唇に分かれ、内側に輪状に毛がある。花冠は10ミリメートルほどの筒があり、先は2唇に分かれる。雄しべは2本、花冠の上唇の先に突き出し、受粉後に下方に曲がる。花筒内面の基部近くに輪状に毛がある。本州から沖縄県、朝鮮、台湾、中国に分布。近縁種にナツノタムラソウとハルノタムラソウがある。

村田 源 2021年8月20日]


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百科事典マイペディア 「アキノタムラソウ」の意味・わかりやすい解説

アキノタムラソウ

シソ科の多年草。本州〜沖縄,中国の山野にはえる。茎は高さ30〜80cm,葉は対生し単一または3出葉,ときには1〜2回羽状複葉になり,長い柄がある。夏から秋に,茎の上部や葉腋に花穂を出し,淡紫色の唇形(しんけい)花を開く。花冠は長さ10〜13mm,筒部の基部に毛環がある。これに似たナツノタムラソウは花がやや小さく,毛環は花筒の中央部にあるもので本州に産する。ハルノタムラソウは高さ10〜20cm,4〜6月に開花し,花はほぼ白色。花筒内に毛が散生する。紀伊半島,四国,九州に産する。

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