アカバナ

改訂新版 世界大百科事典 「アカバナ」の意味・わかりやすい解説

アカバナ (赤花)
willowherb
Epilobium pyrricholophum Fr.et Sav.

アカバナ科の多年草平地から低山帯まで,湿地にはふつうに群生している。北海道(渡島半島)から九州まで広く分布し,朝鮮や中国にもある。茎,子房,萼裂片は花期にも紅紫色をおび,花がすむと赤色の草もみじが美しく,赤花の名がついた。高さ30~60cm,地下茎は垂直にのび,節ごとに細い匍匐(ほふく)枝を出す。地上茎はほとんど分枝せず,白色の細屈毛をつけ,花柄および子房には腺質の直毛が多い。葉は対生し,10~20対。葉柄はごく短く,葉身は狭卵形,長さ1.5~4cm,不ぞろいの低い鋸歯があり,半ば茎を抱く。花序は散房状で数花をつける。7~9月に咲く花は淡紅紫色,直径約1cm,放射相称で,花弁は4枚,先は浅く切れ込む。萼は花冠のほぼ半長,基部は浅く合生し,線形の子房に続く。柱頭は頭状。果実蒴果(さくか)で,4片に裂開し,種子は多数あって先に種髪をつける。近縁種イワアカバナE.cephalostigma,ヒメアカバナE.faurieiがある。

多くは多年草であり,一年草や低木は少ない。花は放射相称,ふつう4数性または2数性を示す。めしべ1本心皮は2~6個,子房は下位で2~6室,蒴果,堅果または液果を結ぶ。世界的に広く分布し,約20属640種を数え,とくに南北アメリカに多い。フクシアゴデチアなど栽培植物が多いマツヨイグサ属には帰化植物が目だつ。
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百科事典マイペディア 「アカバナ」の意味・わかりやすい解説

アカバナ

アカバナ科の多年草。北海道〜九州,東アジアに分布。山野の水辺にはえる。茎は枝分れして高さ50cm内外,卵形の柄のない葉が対生する。7〜9月に淡紅紫色の4弁花が,茎の上部の葉腋に咲く。花弁の先は浅く裂ける。果実は細長い【さく】果(さくか)で,種子に冠毛があり,風に飛ぶ。山地にはえるイワアカバナやケゴンアカバナ,高山生のミヤマアカバナ,シロウマアカバナなど近縁種が多い。

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世界大百科事典(旧版)内のアカバナの言及

【ヤナギラン(柳蘭)】より

…ヤナギランは,日本のほか北半球の北部全域に広く分布している。英名をrosebay,willow herb,fireweed,wicopyという。茎は高さ0.5~1m,あまり分枝しない。…

※「アカバナ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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